内容説明
想像力―空想力・妄想力―をめぐる問題…このテーマに焦点を合わせ、「心の自由な空間」としての「個人的なものの領域」を主題化する。…「個人的なものの領域」とは、単に親密な関係性が醸成される空間であるという以上に、想像力の在り処でありまたその産物の住み処でもある「心の自由な空間」にほかならない。「個人的なもの」を個人的なままに止めておくという選択に拘ってきたのは、それが心の自由な空間を確保することに繋がるからだ。本書では、そのことの意味をさらに突き詰めて考えた。
目次
第1章 平等―自由で対等な関係(社会的なものと平等;個人的なものの領域―二つの力に抗して ほか)
第2章 尊厳―他者との共在の可能性(グローバリゼーションとジェンダー;「第二の母」という問題―育児と掃除 ほか)
第3章 反転―美という評価基準(美醜をめぐる葛藤;傷つく言葉 ほか)
第4章 無限―虚構のリアル(やおいとは何か―二つの特徴;やおいの想像力―虚構としての性的身体 ほか)
著者等紹介
吉澤夏子[ヨシザワナツコ]
1955年東京生まれ。1983年慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得修了。現在、立教大学社会学部教授/博士(社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のほほん
1
「個人的なことは政治的である」というテーゼはよく知られているが、著者はあえて個人的なものは個人的なままに止めておくべきと提起している。公私の明確な区分は、社会的なものの画一的な平等を個人的なものの領域へ均質に一様に拡張していく力と、個人的なものの領域における関係性を差別的なものへと変えようとする家父長的な抑圧の力への抵抗に繋がるという点で重要である。こうした問題提起は、筆者がフェミニズムの観点から中心的に論じている二人の「愛の関係」に限らず、マイノリティを巡る問題を考える上でも有用だと思う。2019/08/01
ベロニカ
1
古来から「やおいはファンタジーである」と言われるがそれはどういうことか、「個人的なものの領域」「虚構」「やおい的心性」をキーワードに分析を試みている。完全解析には至らないが参考になる。中島梓先生にしっかり言及されているので信用できるやおい論。2019/05/15
りんたろー。
0
分かりやすい文章。勉強になった。著者による他の著書も気になるところだ。さしあたって、『世界の儚さの社会学』を読んでみたい。2014/06/30
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- 和書
- はじめてのほんやさん