出版社内容情報
日本の社会福祉にとって宗教とは何だったのか。
本書は、日本の歴史社会の中で鼎立、雑居してきた仏教、儒教、キリスト教の宗教福祉が日本社会福祉思想史に果たしてきた役割の、総合的な検討を試みるものである。
著者の60年以上にわたる社会事業研究・体験から、 生まれては消えていく社会福祉理論に対する思想の重要性と、その思想を支える重要な柱のひとつとしての宗教を再確認する。「福祉─宗教─平和」をテーマとする吉田社会事業研究のひとつの集大成。
同著者:
『吉田久一著作集』(全7巻、川島書店、1993)
『社会福祉思想史入門』(共著、2000) その他多数。
序章 現代社会福祉と宗教思想──歴史的視点(1975~2002)──
一 まえがき
二 社会福祉問題を規定する社会的条件
三 福祉国家の「危機」と日本社会福祉の「抑制」
四 「社会福祉改革」について──その思想史──
五 宗教的社会福祉と現代
第一部 仏教の福祉思想
第1章 日本における「慈悲」的福祉思想の展開
──仏教的「平等」と福祉──
一 行基の福祉思想
二 空也の福祉思想
三 一遍浄土教の福祉思想
四 無能の福祉
第2章 仏教社会事業思想の近代化
一 社会事業思想への出立──渡辺海旭
二 社会事業の思想の形成──矢吹慶輝
三 社会事業思想の成立──長谷川良信
第二部 儒教の福祉思想
第3章 近世儒教の福祉思想
一 山鹿素行の「民政」思想──「士」的慈恵思想の範型
二 貝原益軒の仁愛思想
三 荻生徂徠の「経世」的救済思想
四 三浦梅園の「経世」ならびに「地域」思想
五 大塩中斎の志士仁人思想
第三部 キリスト教の社会福祉思想
第4章 日本キリスト教(プロテスタント)社会福祉思想の展開
──日本プロテスタント社会福祉思想小史──
一 幕末の初期宣教医──J・C・ヘボンとJ・C・ベリー
二 維新啓蒙期の慈善思想──中村正直と楽善会
三 慈善思想の黎明──社会的キリスト教の起点
四 慈善事業の成立とその日本的状況──石井十次と留岡幸助
五 日本社会事業の成立──生江孝之と賀川豊彦
六 戦時厚生事業とキリスト教社会福祉思想──竹中勝男と竹内愛二
七 戦後の旅立ち──糸賀一雄
第5章 社会事業と労働運動の分岐──片山潜の場合──
第6章 福祉と信仰──内村鑑三──
おわりに──履歴と著作目録
人名索引
目次
現代社会福祉と宗教思想―歴史的視点(一九七五~二〇〇二年)
第1部 仏教の福祉思想(日本における「慈悲」的福祉思想の展開―仏教的「平等」と福祉;仏教社会事業思想の近代化)
第2部 儒教の福祉思想(近世儒教の福祉思想)
第3部 キリスト教の社会福祉思想(日本キリスト教(プロテスタント)社会福祉思想の展開―日本プロテスタント社会福祉思想小史
社会事業と労働運動の分岐―片山潜の場合
福祉と信仰―内村鑑三)
著者等紹介
吉田久一[ヨシダキュウイチ]
1915年新潟県中頚域郡に生る。1941年大正大学文学部(旧制)卒業。日本社会事業大学(兼任大正大学)、日本女子大学、東洋大学教授等を経て、現在、日本社会事業大学名誉教授。2003年第37回仏教伝道文化賞授与さる
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