出版社内容情報
東アジアに根付いた道徳観念は、日本の思想や教育にどのような影響を与えたのか。中国思想に基づく道徳教育史を描きだす気鋭の一書。
日本における歴史的な道徳観念の変遷を考える際に、大陸からの影響は避けては通れない。本書は江戸時代、近代日本、そして豊かさ・便利さの裏側でこれまでの社会秩序が変貌する現代日本を対象に、五倫や三綱といった東アジアの道徳、教科としての修身と教育勅語、そして小学校道徳の教材と「孝」の精神を通じて、道徳教育を展望する。
内容説明
本書は、どうすれば私たちはこの時代に一人の人間としてよりよく生きていくことができるのか、と18年間模索してきた筆者の答案です。本書は、中国の儒教道徳をメインに話を進めています。構成としては、古代中国の儒教を説くことから始まり、時を経て朱子学として東アジア世界に根付くものの、近代日本では欧米化と戦争の波に翻弄され、私たちが生きる現代日本では教育において中国思想の影は皆無にひとしくなったことを述べています。そのうえで、21世紀をどう生きていけばよいのかを、それでもやはり中国思想から考えてみました。
目次
第1部 教科書の中の儒教(巫祝の子 孔子;「儒教」か「儒学」か)
第2部 社会と家庭を安定させた中国の儒教道徳(五倫と三綱;朱子学の伝播とその影響)
第3部 近代日本の儒教道徳(教育勅語に残った朱子学;井上哲次郎の江戸儒学三部作 ほか)
第4部 戦後の日本は本当に豊かになったのか(高度経済成長と望郷歌―「孝」考;会う約束を守るということ―「尾生の信」考 ほか)
第5部 21世紀をどう生きていくのか(中庸とは何か―「ほどほどに」生きていく;「足るを知る」こと―『老子』に学ぶ ほか)
著者等紹介
井ノ口哲也[イノクチテツヤ]
1971年兵庫県神戸市生まれ。1994年山口大学人文学部人文学科(中国哲学専攻)卒業。2003年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。2006年博士(文学)(東京大学)。現在、東京学芸大学教育学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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