出版社内容情報
今日の激しい「教育改革」の時代、教師はどのようにして自己の「教職アイデンティティ」を確保し、生徒の前に立ち続けるのだろうか。イギリス・スウェーデン・アメリカ・韓国・日本の比較研究をまじえつつ、社会的・文化的文脈の中に位置し、歴史的な教員文化の中核にありながらも、厚いべールに覆われた教師存在について検証する。
はしがき
序 教師の専門的力量の発揮には、教職アイデンティティが関与する
──現代日本の「教員制度改革」と「教師」論議に寄せる課題提起として──
久冨善之
Ⅰ部 教育改革時代における教師の専門性をめぐる文脈と課題論
第1章 「改革」時代における教師の専門性とアイデンティティ
──それらが置かれている今日的文脈と、民主的文脈への模索──
久冨善之
1 「教育改革」における<教師の位置>の二重性
2 「教師たちの専門的成長」言説は<二重の位置>をつなぐ
3 教師の仕事の難しさをめぐって
4 文化としての「教職アイデンティティ」
5 教育改革と教員文化
第2章 教育改革の動向と教師の「専門性」に関する諸問題
岩田康之
1 新自由主義的動向下の大学・教師・教師教育
2 教師の資質向上に関する諸論点
3 教師の「専門性」に関する日本的特質
Ⅱ部 教育改革と教師たち
──国際比較研究プロジェクトの日本側研究報告──
第3章 教育改革の動向と背景に関する5ヵ国比較分析
──イギリス・スウェーデン・アメリカ・韓国・日本──
中田康彦(+)改革比較グループ
1 5ヵ国比較の意義と可能性
2 教育改革全般の改革動向
3 教師の職業的地位と勤務条件
4 教師の資質向上をめぐる動き
5 まとめにかえて
第4章 5ヵ国の教師たち、その教職アイデンティティ確保戦略
長谷川裕(+)実態調査グループ
1 教職の諸困難とそれをめぐる諸ファクターの関連
──調査研究および本章の課題意識
2 教職アイデンティティ・バーンアウトと教員文化
3 教職アイデンティティと教育改革
4 日本の教師の二元化戦略、教育改革、“開かれた学校”の可能性
5 まとめ
第5章 日本の教職アイデンティティの歴史的形成
──日本の教員改革と教育文化の展開に着目して──
木村元(+)歴史グループ
1 教職アイデンティティを捉える視点
2 日本における教員政策の概要
3 社会的地位の確保
4 教師の資質──人間性(徳性)を重視するという特徴
5 仕事の性格を無限定に捉えるという伝統
6 現代の教員文化をめぐる課題
第6章 日本側研究報告の一つのまとめとして
──危機の時代の教員制度改革と教員言説・教員文化・教職アイデンティティ──
久冨善之(+)3グループ代表
1 教員制度改革の国際的焦点
2 日本における<教員文化>の歴史的形成とその展開
3 教職アイデンティティ確保の文化的課題性とそれに絡む諸要因
4 日本における教職アイデンティティ確保の「二元化」戦略と
民主的学校指向との微妙な関係
──「改革」時代における<教職内面倫理>の行方を考える
5 国際比較の中での日本的独自性格の意味
Ⅲ部 教職専門性の現在と未来
──海外からの報告──
第7章 近年の教育改革を超えて
──民主主義的な専門職性に向けて──
G.ウィッティ&E.ウィズビー(翻訳:松田洋介)
1 「専門職」を定義するためのいくつかのアプローチ
2 教師の自律性の「黄金期」から「遠隔操作(steering at a distance)」へ
3 ニューライトによる再構築からニューレイバーの修正主義へ
4 変化する文脈の中での教師の専門職性
5 教師の自律性・統制への含意
6 「民主主義的な専門職性」へと向けて
第8章 教育改革と教師
──スウェーデンにおいて、また英国との若干の比較を通して──
リスベス・ルンダール(翻訳:久冨善之)
1 はじめに
2 福祉と教育についての政策の類型
3 スウェーデンの教育と教育政策
4 教育についての政治の再編成
5 教師の仕事と専門的立場への衝撃
第9章 民主主義・人権と教師の役割
カン・スンウォン(翻訳:本田伊克)
1 韓国における民主主義と人権の歴史
2 韓国の学校における人権問題
3 変革の担い手あるいは反動勢力としての教員の役割
4 結論
第10章 不確実性の時代における教師の専門職性
──折衷的でプラグマティックな教師アイデンティティの出現──
デーヴィッド・ハルピン(翻訳:勝野正章)
1 教師─国家関係の変化
2 プラグマティズムと教師の専門職性
第11章 グローバル化の波に国家はどう防壁になっているか
ゲイビー・ワイナー(翻訳:梅景優子)
1 専門職性
2 研究
3 女性化
4 伝統(または遺産)
5 グローバリゼーション
6 考察
結び 国際比較調査と国際シンポジウムから見えてきたもの
──教職アイデンティティの模索は教員世界の中で進んでいる──
久冨善之・長谷川裕
索引
内容説明
教師の「能力・専門性」を問う。今日の激しい「教育改革」時代、教師はどのようにして自己の「教職アイデンティティ」を確保し、生徒の前に立ち続けるのだろうか。3年間の比較・調査実証・歴史研究と、締めくくりの国際シンポジウムの内容を収録。
目次
教師の専門的力量の発揮には、教職アイデンティティが関与する―現代日本の「教員制度改革」と「教師」論議に寄せる課題提起として
1部 教育改革時代における教師の専門性をめぐる文脈と課題論(「改革」時代における教師の専門性とアイデンティティ―それらが置かれている今日的文脈と、民主的文脈への模索;教育改革の動向と教師の「専門性」に関する諸問題)
2部 教育改革と教師たち―国際比較研究プロジェクトの日本側研究報告(教育改革の動向と背景に関する5ヵ国比較分析―イギリス・スウェーデン・アメリカ・韓国・日本;5ヵ国の教師たち、その教職アイデンティティ確保戦略;日本の教職アイデンティティの歴史的形成―日本の教員改革と教育文化の展開に着目して ほか)
3部 教職専門性の現在と未来―海外からの報告(近年の教育改革を超えて―民主主義的な専門職性に向けて;教育改革と教師―スウェーデンにおいて、また英国との若干の比較を通して;民主主義・人権と教師の役割 ほか)
著者等紹介
久冨善之[クドミヨシユキ]
現在、一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は教育社会学、学校文化論、教員文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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