出版社内容情報
聖書に基づく世界史記述(アダムとエヴァ、ノアの箱舟など創世紀元による歴史=普遍史)はアウグスティヌスにより確立された。以後、東ローマ帝国の滅亡、ルネサンス、地理上の発見、宗教改革、科学革命などの社会・文化変動を受け、普遍史解釈は変容を迫られたものの、何と18世紀までヨーロッパを支配した。18世紀後半に至り、ガッテーラらドイツ啓蒙主義の歴史学者により、歴史学の科学化、宗教からの独立へと転換がなされ、ここに初めて世俗的、科学的世界史が誕生した。
未開拓な分野に挑み、生々しい経緯を追う労作。
目次
第1編 ドイツ啓蒙主義歴史学の諸前提
第1章 普遍史―伝統的・キリスト教的世界史記述―
1 カトリック的普遍史
2 ルターの歴史観
3 メランヒトンとプロテスタント的普遍史
第2章 普遍史の危機の諸相
1 異教徒の古さの問題―エジプト史と中国史の古さの問題―
2 科学革命―ビュフォン『博物誌』―
3 聖書の批判的研究の発展と年代学論争
第3章 新タイプの世界史記述
1 プーフェンドルフの歴史記述と自然状態論
2 新タイプの普遍史
第2編 ガッテラーと啓蒙主義歴史学の形成
第1章 ガッテラーの生涯とゲッティンゲン大学
1 ガッテラーの生涯と活動
2 ゲッティンゲン大学と新教養派
第2章 ガッテラーと四種類の世界史記述
1 『普遍史教科書』(1761)―素材収集と方法論の確立―
2 『普遍史序説』(1771)―体系的・18世紀的普遍史―
3 『世界史』(1785)―普遍史から世界史へ―
4 『世界史試論』(1792)―近代的世界史の試論―
第3章 ガッテラーの世界史記述と聖書の位置
1 ガッテラーによる聖書記述の「非合理化の合理化」
2 批判的合理化への変化の諸原因
第4章 エジプト史の古さの問題とガッテラー
1 『普遍史教科書』におけるエジプト史記述
2 『普遍史序説』におけるエジプト史の短縮
3 『世界史』と年代的枠組みの拡張によるエジプト史の再編
4 『世界史試論』におけるエジプト史の再々編
第5章 中国史の古さの問題とガッテラー
1 『普遍史序説』における中国史記述
2 『普遍史序説』における中国史記述の問題点
3 『世界史』における一つの解決
4 『世界史試論』における他の解決
第6章 古代ギリシア史とガッテラー
1 ガッテラーの古代ギリシア史記述の変遷
2 ガッテラーの古代ギリシア史記述の歴史的位置
第3編 ドイツ啓蒙主義歴史学の展開
第1章 イーゼリーン『人類史』と啓蒙主義的進歩史の最所の体系化
1 生涯と「ルソーのパラドックス」
2 イーゼリーン『人類史』の世界史記述
第2章 シュレーツァーと啓蒙主義歴史学の展開
1 生涯と活動
2 『普遍史の観念』(1772~73)
3 『世界史』(1785)
第3章 カントにおける歴史のはじまりと終末の問題
1 『天界一般自然史と理論』(1755)
2 『世界市民的意図における一般史のための理念』(1784と人類の進歩)
3 『人類歴史の憶測的起源』(1786)と歴史の始まり
4 『万物の終末』(1794)と「終末」の終末
註
付表
あとがき
内容説明
キリスト教的世界史は、ローマ帝国の滅亡、ルネサンス、地理上の発見、宗教改革、科学革命を経て18世紀まで生きた。これを否定し科学的世界史へと転換したのが、ドイツ啓蒙主義歴史学であった。本書では、この奇跡と功績を明らかにした。
目次
第1編 ドイツ啓蒙主義歴史学の諸前提(普遍史―伝統的・キリスト教的世界史記述;普遍史の危機の諸相;新タイプの世界史記述)
第2編 ガッテラーと啓蒙主義歴史学の形成(ガッテラーの生涯とゲッティンゲン大学;ガッテラーと四種類の世界史記述;ガッテラーの世界史記述と聖書の位置 ほか)
第3編 ドイツ啓蒙主義歴史学の展開(イーゼリーン『人類史』(1764)と啓蒙主義的進歩史の最初の体系化
シュレーツァーと啓蒙主義歴史学の展開
カントにおける歴史のはじまりと終末の問題)