出版社内容情報
1960年~70年代に頻発した航空機墜落事故の原因となる気象現象「ダウンバースト」を発見し、その後の私たちに空の安全をもたら
内容説明
今、私たちは飛行機に乗って安全に世界じゅうを旅することができます。しかし、30年ほど前までは、1年半に1度の割合で墜落事故が起こり、多くの人が命を落としていました。そうした悲劇を食い止め、現代に生きる私たちに空の安全をもたらしたのは、一人の日本人でした。彼の名は藤田哲也。その原点には長崎の原爆調査がありました。アメリカで活躍し、日本ではほとんど知られてこなかった偉大な気象学者の足跡をたどります。
目次
はじめに 「航空事故を激減させた日本人気象学者」
第1章 「謎の事故・謎の風・謎の男」
第2章 「数奇な人生」
第3章 「原点」
第4章 「発見」
第5章 「批判の嵐」
第6章 「勇気」
第7章 「最期の研究」
おわりに 「若者たちへ」
著者等紹介
佐々木健一[ササキケンイチ]
1977年札幌生まれ。NHKエデュケーショナルのディレクターとして『哲子の部屋』、『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズなどの特別番組を企画・制作。2014年、『辞書になった男』(文藝春秋)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。2017年、この本のもととなった番組『Mr.トルネード―気象学で世界を救った男』で科学ジャーナリスト賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
107
藤田哲也の生涯をダウンバースト発見による航空事故激減の偉業に焦点を当てて辿る。そこには機械工学や測量術など気象学界では異色の経歴と視点が生かされていた。数多の批判やプレッシャーに耐え得るのも徹底した観測主義で培われた自負心によるところだろう。生き様を貫いた最後の研究も感動的。謎の風の観測の代償に自宅売却を覚悟したり、緊急のためならキャリアも危険に晒すなど行動が勇敢。「事故が起こってから探すんじゃ駄目なんです!」『恥ずかしがらず、言いたいことを言いなさい』—悲劇や苦悩の中には大いなる進歩の可能性が眠っている2021/09/23
まる子
23
北九州で生まれ育ちMr.トルネードと呼ばれた気象学者の藤田哲也(藤田・テッド・哲也)。自分の目で確かめ、自分の方法で論文を発表、様々な批判にあう事度々。そんな彼は、経験と冷蔵庫いっぱいの写真から、竜巻の下降気流やマイクロバーストからのダウンバーストを突き止め、航空機事故を激減させた一人の日本人。彼は最後の講演で「特に、若い世代に言いたいのは、『恥ずかしがらず、言いたいことを言いなさい』」だった。例えばそれが半分間違っていたとしても、半分は確かだから。と。総ルビの児童書伝記だった。学校に入れたい。2024/02/12
mitya
9
こどもと図書館に行った時に気になったので、手に取った。Fスケールは何となく聞いたことがあったが、藤田哲也氏ののことは全く知らなかった。竜巻の研究やダウンバーストを発見し、気象界、航空機界で多大なる貢献をした。この間まで一年半に一回の割合で起きていた飛行機事故だったが、藤田氏のおかげで最も安全な乗り物になった。日本人として誇らしい人物を知ることができた。2021/03/13
クサバナリスト
8
全く知らなかった‼ これからは飛行機に乗る度に思い出すだろう‼2020/10/03
やん
5
NHKのドキュメントを見てから探した本。ルビありの子供向け本ではあるが、十分に読み応えがあった。竜巻のフジタスケールは知っていたが、藤田氏がこんなにユニークな人物だったとは。日本であまり知られていないのがもったいない。晩年は病を得て辛い日々を送ったようだが、友人に勧められて自分の病状を克明に記録していった姿には頭が下がる。今度は大人版も読んでみよう。本人が書いた非売品の本が出版されないかな。是非とも読んでみたい。2018/05/25