出版社内容情報
哲学と科学を緊密に結びつけ、科学をとおして人間の知の営みを捉えようとする哲学上の立場=「自然主義」。本書では人間の心には何が生まれつき備わっているのかをめぐる生得説と経験主義の対立を軸に、心理学や認知科学における新しい仮説や知見をふんだんに取り込み、領域の拡大と深化を続ける自然主義の大航海へと読者をいざなう。
内容説明
哲学と心を対象とする諸科学とが交差する場で繰り広げられる知のスペクタクルの最前線へ!自然主義からの眺望を示す初めての入門書。
目次
第1章 自然主義の輪郭
第2章 道徳と言語のネイティヴィズム
第3章 味わう道徳、学ぶ道徳
第4章 生得的な心は科学する
第5章 経験主義の逆襲
第6章 ふたつの心とサイボーグ
第7章 善き生・工学・道徳的進歩
第8章 疑いとア・プリオリ
第9章 自然化する哲学―存在と方法
著者等紹介
植原亮[ウエハラリョウ]
1978年埼玉県に生まれる。2008年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学、博士(学術、2011年)。現在、関西大学総合情報学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンセット
8
古代からの観念的な哲学や、ポパーなどの(本書で言えば懐疑論的な)科学哲学などは、実際に科学や工学の問題に取り組んでる人からすると、的外れな議論をしてる印象があると思う。本書では、哲学の特権性を否定し、人間やその人工物も徹底して「自然」の中に位置付けようとする。唯物論的な世界観(物理主義)を前提にしつつ、感情や文化と結び付けて道徳を定義する所などは面白かった。科学者は脳だけでなく紙や黒板などの「外的足場」も利用して研究を進めるとか、工学的問題は事実だけでなく規範の問題も含んでいるという指摘は興味深かった。2020/03/09
sk
8
哲学の問題を科学的に解決しようとする自然主義の入門書。この分野を専攻していた身としては、本書は入門の入門という感じ。だが分かりやすく丁寧で、入門書として最適だと思われる。2017/12/27
YT
7
科学と哲学手を取ってやっていきましょうという、自然主義の入門書。所謂、分析系哲学への導入になるのだろうか。 序盤の生得説と経験主義の両方の議論の良さをさんざん議論してから、二重プロセス理論の解説に繋がっていくのはすごくわかりやすかった。 ものを考える際に外付けのデバイスを使うのが当たり前だったり、受け継がれてきた外的足場に生活が保障されていたりで、既に我々がサイボーグだという話も面白い... しっかり入門させてくれる良書だと思います!!2024/07/01
borisbear
4
kindle化がきっかけで読んだが、著者の力量を感じる良い本だった。本書で扱われている「生得説と経験主義」という対比は、それ自体は程度問題であることはボールドウィン効果(特定種類の経験的学習を促進し方向付ける遺伝的適応)等という言葉の存在でも明らかだが、この対比は人間という動物について広範な議論をするための軸としては実に有益で、特に本書中盤は自分の個人的関心との接点が非常に多い内容だった。2021/04/18
左手爆弾
4
表題に偽りなく、哲学に於ける自然主義という立場がいかなるものなのか、豊富な事例と的確な解説によって紹介。自然主義の立場の哲学者は、哲学と科学の結びつきを主張する。この世界とは自然であり、人間の心などもそれを構成する部分に過ぎない。本書全体のモチーフになっているのは「ノイラートの船」だ。哲学者が試みてきた、知識の根拠付けをするための契機などはなく、我々は既に自然科学という不完全だが重要な道具を使いながら進んでいくしかない。こうした自然主義の主張と想定される反論を様々なトピックについて紹介していく。2020/08/15
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