内容説明
せまい厨房で、カレーのスパイスと自分の夢や希望をかき混ぜる在日ネパール人コックの知られざる苦悩と過酷な現実…ネパールから来日したコックとその家族が直面する言葉・仕事・健康・教育の問題。当事者や送り出すネパール側だけでなく、受け入れる日本側の課題も多い。ネパールから留学生としてやってきた臨床心理士の視点から、在日ネパール人コックとその家族の、苦悩と希望を描き出す。
目次
第1章 チーズナン
第2章 メンタルヘルス
第3章 サイクル
第4章 内戦の影
第5章 母親たち
第6章 子どもたち
第7章 暗雲の中の希望の星
著者等紹介
田中雅子[タナカマサコ]
上智大学総合グローバル学部教授。博士(開発学)。社会福祉士。滞日ネパール人のための情報提供ネットワークコーディネーター。国際協力論、ジェンダー論、南アジア地域研究を教えるかたわら、国内外の市民運動や国際協力の実務に関わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アリーマ
14
殆どがインド料理のコックとして来日するネパールの出稼ぎ労働者の実態をえぐる。著者自身は留学生として来日、大学院を出て臨床心理士になった。ブローカーの暗躍、劣悪な職場環境、低賃金。いわゆるインネパ店が俄に大増殖した裏に、こんな話があったかと改めて驚く。出稼ぎ本人だけでなく、家族や子供の状況も掘り下げている。しかしこんな雑な形でビザ発給が行われていたか、と改めて驚いた。この歪な搾取構造の基は日本政府のビザ発給状況。もうちょっとなんとかならんのか?うまいダルバートがあちこちあるのはありがたいんだけどね。★★★★2022/06/30
春風
9
日本中どこにでもあるインネパカレー店。いったいなぜインド人でなくネパール人が経営しているのか、そしてなぜこんなに増えているのか、という謎に答えをくれる本。背後にあるのは移民労働に頼らざるを得ないネパールの貧しさと、日本の在留資格の甘さ。答えは決して心地よいものではない。2022/06/04
モリータ
8
◆2022年刊。来日したネパール人コックとその家族の来歴・苦しみを、日ネ双方の社会的背景とともに描く。著者とそのパートナーの原稿を、翻訳者(外国人支援員の定松氏)が翻訳し、編者が見出し・注を付けるなどして監訳。制作過程は巻末解説に記述あり。◆著者はネパール出身の臨床心理士。留学生として来日し、国際医療福祉大学大学院で博士号取得、国内外での災害時避難民支援等に従事。編者は上智大学総合グローバル学部教授。国際協力・ジェンダー・南アジア研究を専門としつつネパール人ネットワークのコーディネートなど実践にも関わる。2023/01/27
noznoz
6
なぜこんなにどこにもインド・ネパール料理屋があるのか、謎が解けた。コロナ渦で、在日ネパール人の自殺が増えているというのも在日ネパール人から聞いている。少なくとも、親の都合で日本に連れられてきた外国人の子供たちがちゃんと教育が受けられたらと思う。2022/03/31
ももこ
4
どこの街でも目にするようになったインド・ネパールのカレー店。なぜこんなに増えていくのか不思議に思っていたが、ネパールという国の抱える問題が噴出した形であることを本書で知った。 我々が何気に注文しているチーズナン。その裏にネパール人たちの苦悩がある。 次回レストランを訪れた時には彼らの置かれている状況を心にとめて料理を食べようと思う。2022/06/20