感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
60
数十年前の初読時、テレーズはモーリヤックのボヴァリー夫人かと思えた。どちらも平凡な家庭や凡庸な夫に幻滅した女性が抜け出そうとあがき、犯罪に走るのだから。しかし今回新訳で読み返し、両者ははっきり別物と悟った。ボヴァリー夫人が不倫や浪費で別の人間に生まれ変わった気分に満たされるのに対し、自分を正面から見据える理知と才覚を持ったテレーズは自己嫌悪に陥って自らを罰しているのだ。どちらも女ひとりでは何もできない時代だからこそ成立した物語であり、現代フランスならシャルルやベルナールの捨てられる話として描かれるだろう。2021/04/05
紫羊
12
登場人物が揃ってステレオタイプ。この人物ならこう答えるだろうという想像から大きく外れることもなくストーリーが進んでいく。ただ、夫ベルナールの視点で読んだせいか、初めて読んだときとは逆で、テレーズがひどく凡庸な人間に思えてならなかった。鳥籠から飛び出して厳しい自然を生きる勇気も知恵もない。所詮は誰かに依存しなければ生きていけない甘ったれた存在。結局どう読んでもヒロインに共感できそうにない。遠藤周作訳を読むべきか…2024/12/11