出版社内容情報
本書は,話題を楕円関数に特化し,それを歴史的な流れに沿って解説することで,数学の面白さに対する興味や関心が自然に繋がり高まっていくように試みたものである。楕円関数は,近年情報系分野の人たちにも注目されているが,何にもまして19世紀から20世紀の数学の方向を導いて来た話題である。クラインの言っていた三つの「A」,すなわち Arithmetic, Analysis, Algebra の統合・発展の契機となった話題であり,文化的な教養として取り上げるにふさわしい。また,本書の他に類を見ない特徴として「虚数乗法」の記述がある。楕円関数論にとって重大な役割を果たし,結局は100年をかけた類体論への道標となったものであり,アーベル,ヤコビ,クロネッカーらの系譜に流れているものを数学文化として顕在化しておくことは価値がある。本書は概観でしかないが,広大な数学世界へのひとつの足掛かりとしての役割を果たしてくれるだろう。
第1章 楕円積分とそのRiemann面
第2章 複素関数論から
第3章 楕円関数と周期加群
第4章 虚数乗法
第5章 超楕円積分とそのRiemann面
参考文献
目次
第1章 楕円積分とそのRiemann面(円の弧長とレムニスケートの弧長;楕円積分 ほか)
第2章 複素関数論から(複素平面上の基本的な図形;区分的に滑らかな曲線とJordanの曲線定理 ほか)
第3章 楕円関数と周期加群(楕円積分の積分関数と逆関数;周期加群とWeierstrassの〓(ペー)関数 ほか)
第4章 虚数乗法(複素輪環面の間の同型写像;Abelの意味での虚数乗法 ほか)
第5章 超楕円積分とそのRiemann面(超楕円積分とそのRiemann面;超楕円曲線のJacobi多様体 ほか)
著者等紹介
三宅克哉[ミヤケカツヤ]
1964年東京大学理学部数学科卒業。1969年Princeton大学大学院修了、Ph.D.現在、東京都立大学名誉教授、津田塾大学客員教授。専攻は数学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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