出版社内容情報
超伝導は物質が示す最も興味深い量子現象の一つである。超伝導状態への転移は通常とても低い温度で起こるが,これが室温で起こるような物質が存在するだろうか,という問題は大変興味深い。この問題について,近年,高圧下における水素化物の超伝導が注目を集めている。2015年に高圧下の硫化水素によって,これまで銅酸化物高温超伝導体が保持していた転移温度の最高記録が塗り替えられたあと,新しい水素化物の高温超伝導体が次々と発見され,室温超伝導の報告もなされるようになっている。
水素化物における超伝導の研究は,金属水素における高温超伝導の可能性が考察された1960年代に遡ることができる。歴史上,実験にさきがけて理論計算が新超伝導体の発見を正確に予測した例はほとんどないが,水素化物超伝導体は大変珍しい例外で,これまでいくつかの高温超伝導体の結晶構造と転移温度が精密に計算され,実験研究に具体的な指針を与えてきた。本書は,この理論計算の果たしている役割に焦点を当てて最近の進展を解説したものである。
目次
第1章 高圧下水素化物の室温超伝導(高圧下水素化物の研究の歴史;高温超伝導の発見)
第2章 超伝導体の構造予測(ポテンシャルエネルギー曲面;ランダム構造探索法 ほか)
第3章 超伝導の第一原理計算(はじめに:何を計算しなければならないか?;格子振動とその量子化 ほか)
第4章 代表的な水素化物超伝導体(PdH;H3S ほか)
著者等紹介
有田亮太郎[アリタリョウタロウ]
2000年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。2000年株式会社日本総合研究所。2000年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻助手。2004年MaxPlanck固体研究所博士研究員。2006年理化学研究所研究員。2007年理化学研究所専任研究員。2008年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻准教授。2014年理化学研究所チームリーダー。2018年‐現在、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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