出版社内容情報
⇒ 【試し読み】はこちらからご覧いただけます(PDF 2.24MB)
人々を熱狂させた社会現象に迫る
近代スピリチュアリズム研究の決定版
19世紀半ばのアメリカに出現し、興隆を見せたスピリチュアル・ムーヴメントとはいったい何だったのか。ことの発端は1847年、ニューヨーク州の外れの小さな村で聞こえてきた不可解な音と、『自然の原理』という奇書の誕生だった。
「心霊主義」とも訳されるこのムーヴメントは、19世紀後半の英米圏で、産業革命がもたらした労働環境の悪化などに対する社会改革運動やキリスト教の退潮を後ろ盾に大きな流れになり、ウォレス、ダーウィン、ハクスリー、ファラデー、ティンダル、クルックス、シジウィック、ジェイムズ、パースら、第一線で活躍していた学者たちも巻き込んでいった。
源流となる18世紀のスウェーデンボルグやメスメリズムに遡りつつ、ムーヴメントが隆盛を極めた1847年から1903年までの資料から、“見えない力”や“霊的なるもの”に翻弄された人々の記録を辿りながら、その背景にあった社会思想や文化的意義を踏まえて考察する。
厖大な資料をもとにムーヴメントの興亡を克明に描き出した比類なき大著、待望の刊行!
【目次】
《第1部 スピリチュアリズムの台頭》
第1章 源流――メスメリズムからアンドルー・ジャクソン・デイヴィスまで
メスメルと動物磁気/ピュイゼギュールと磁気睡眠/メスメリズムの神秘主義化/アメリカに進出するメスメリズム/フレノメスメリズム/新たな啓示/アメリカのスウェーデンボルグ主義/医学的透視能力/啓示に至る四段階/超自然的なソースなのか?/霊的権威をめぐる問題
第2章 ムーヴメントのはじまり――フォックス姉妹による霊との交信
フォックス家から報告された不可解な騒音/交霊会のはじまり/リフォーマーたちに広まる霊との交信/公共の場での交霊会へ/ニューヨークのセレブリティとなったフォックス姉妹/ラップ音の調査とトリックの暴露/続々と現れるミディアムとムーヴメントの広がり/交霊会と女性の役割/食いちがう霊たちからのメッセージ
第3章 社会改革運動の夢――霊的テクノロジーから霊的社会主義のユートピアまで
フェルプス家での霊現象/霊の言語の解読/「電気」と「磁気」と霊現象/ミディアムになった博愛主義者/ヒーラーとしての目覚め/第三の時代を告げる預言者へ/電気の幼子/霊的社会主義のユートピア/スピリチュアリズムと社会改革/女性トランス・ミディアムと「女らしさ」の規範
第4章 エンターテインメント化する交霊会――霊のキャビネットから空中浮遊まで
クーンズ家の「霊の部屋」でのコンサート/ロープ抜け/霊のキャビネット/奇術疑惑/ミディアムと奇術師のあいだ/ペレット・リーディングとダーモグラフィー/ダニエル・ダングラス・ヒューム登場/事実を敬愛し名誉棄損を憎む/スラッジ氏/一八六〇年代アメリカン・インヴェイジョン/イギリス産スピリチュアリズムのはじまり
第5章 科学――霊の存在を証明しようとした科学者たち
メスメリズムからスピリチュアリズムへ/イギリスにおけるメスメリズムの広がり/テーブル・ターニングとオド/ヒプノティズムの誕生/テーブル・ターニングの原因/スピリットスコープ/科学的自然主義とXクラブ/科学者は交霊会で何を見たか/霊現象を認めたファラデー/科学と宗教の分断/霊界での適者進化の法則/ロンドン弁証法協会/何が可能で、何が不可能なのか/サイキック・フォースの発見/狼人間メスメリズム説/不朽の誠実さ/転向者たち/クルックスによる実験の結論/物質化し歩き回る霊
第6章 スター・ミディアムたちの光と影――全身物質化と劇場としての交霊会
モーゼスによる『霊の教え』/全身物質化のはじまり/ケイティ・キングはフローレンス・クックの偽装なのか?/人間の手で捕まえられた霊/写真におさめられた物質化した霊/クルックスの隠された想い/ダーウィンの不安/ダーウィン家での交霊会/ハクスリーが交霊会で見たもの/ミディアム VS ミディアム/物質化された霊の不気味な姿/全身物質化のトリック/「言語に絶するできごと」/光と影/英国心理学協会/クルックスとエリファス・レヴィ
第7章 変容するムーヴメント――スピリチュアリズムからオカルティズムへ
オカルティズムとエソテリシズム/エディ兄弟と全身物質化/懐疑派もゆらぐできごと/聖なる真実のための闘い/ケイティ・キングふたたび/全身物質化の暴露とそれへの反論/スピリチュアリズムのリーダーたちはスクールボーイにすぎない/ジョン・キングの自画像/オリエンタル・カバラ/神智学協会の設立へ/調和哲学
《第2部 サイキカル・リサーチ》
第8章 不可知論を超えて――マインド・リーディングからSPRの設立まで
スレート・ライティング/告発されたミディアム/四次元空間の証明/精神の直接作用と第六感/マインド・リーディング VS マッスル・リーディング/サイキカル・リサーチ協会の設立/シジウィックとキリスト教への懐疑/マイヤーズとスピリチュアリズムへの希望/SPR以前のシジウィック・グループ/不滅への願い/事実の上に事実を、実験に次ぐ実験を
第9章 サイキカル・リサーチのはじまり――テレパシーと生者の幻
テレパシーの誕生/テレパシー仮説/スレート・ライティング/SPRと神智学協会/人間の観察力と記憶の不完全さ/完璧な疑似交霊会/ガーニーと『生者の幻』/近代化された幽霊譚/その手紙はどこにあるのか/ジェイムズとASPRの設立/そもそも幽霊の調査は可能なのか/思考伝達実験への批判/『生者の幻』に対する批判/思考伝達実験での不正発覚/科学界の承認を勝ち取るために/ヒプノティズムとテレパシー/国際生理学的心理学会議
第10章 終焉――スピリチュアリズムを死に至らしめる一撃
第一級ミディアムの死/セイバート委員会/スピリチュアリズムを死に至らしめる打撃/ムーヴメントの終焉/交霊会を成功させるには/ジェイムズが衝撃を受けたミディアム/パイパー夫人の初期の交霊会/パイパー夫人を調査せよ/思考伝達だけで説明できるか/意識下の記憶/霊との間接的な交信/国際実験心理学会議と幻覚統計調査/撤回された詐欺の告白
第11章 白いカラスを求めて――レオノーラ・パイパーの謎
モーゼスの能力は本物だったか/私欲のない詐欺/リシェを確信させた物理ミディアム/パラディーノの実験/詐欺だとしても本物の能力がある?/わたし自身の白いカラスはパイパー夫人だ/最強のデバンカーの転向/それは死んだ友人の霊なのか?/生者とのテレパシーか、霊との交信か/『霊の教え』はまちがっていた?/懐疑派でも否定できない現象/新心理学 VS サイキカル・リサーチ
第12章 人間の人格と肉体の死後のその存続――フレデリック・マイヤーズと非宗教化された魂
シジウィックとマイヤーズの死/閾下自己/精神の進化/マイヤーズ問題
【著者】伊泉龍一(いずみ・りゅういち)
占い・精神世界研究家。翻訳家。著書に『タロット大全――歴史から図像まで』(紀伊國屋書店)などがある。訳書に、ポール・ガンビーノ『死を祀るコレクション――モダン・ゴシックという生き方、その住まい』(グラフィック社)、ピーター・ビーバガル『シーズン・オブ・ザ・ウィッチ――いかにしてオカルトはロックンロールを救ったのか?』、ロバート・C . コトレル『60s カウンターカルチャー――セックス・ドラッグ・ロックンロール』(以上、駒草出版)、ショーン・レヴィ『レディ・ステディ・ゴー!――60s スウィンギン・ロンドン』、ドン・ラティン『ハーバード・サイケデリック・クラブ――ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』、『至福を追い求めて――60年代のスピリチュアルな理想が現代の私たちの生き方をいかに形作っているか』(以上、フォーテュナ)ほか多数。音楽・映画・文化史・インテリアなどに関する訳書もある。
内容説明
戸惑う人々。科学者間の論争。未解明の謎。源流となる18世紀のスウェーデンボルグやメスメリズムに遡りつつ、ムーヴメントが隆盛を極めた時代の記録から、背景にあった社会思想や文化的意義を踏まえて考察する。人々を熱狂させた社会現象に迫る近代スピリチュアリズム研究の決定版。
目次
第1部 スピリチュアリズムの台頭(源流 メスメリズムからアンドルー・ジャクソン・デイヴィスまで;ムーヴメントのはじまり フォックス姉妹による霊との交信;社会改革運動の夢 霊的テクノロジーから霊的社会主義のユートピアまで;エンターテインメント化する交霊会 霊のキャビネットから空中浮遊まで;科学 霊の存在を証明しようとした科学者たち;スター・ミディアムたちの光と影―全身物質化と劇場としての交霊会;変容するムーヴメントースピリチュアリズムからオカルティズムへ)
第2部 サイキカル・リサーチ(不可知論を超えて マインド・リーディングからSPRの設立まで;サイキカル・リサーチのはじまり テレパシーと生者の幻;終焉 スピリチュアリズムを死に至らしめる一撃;白いカラスを求めて レオノーラ・パイパーの謎;人間の人格と肉体の死後のその存続 フレデリック・マイヤーズと非宗教化された魂)
著者等紹介
伊泉龍一[イズミリュウイチ]
占い・精神世界研究家。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。