出版社内容情報
〈狼狂〉シオランが,言葉の暴力を縦横に駆使して,現代に叩きつけた〈黙示録〉。過去のユートピア思想のたわ言と現代の錯乱から,人間脱出のバネとなる思想を創出しようとする。これこそ一切と対決する逆説の書といえよう。
〈内容〉社会の二つの典型について/ロシアと自由のウィルス/暴君学校/怨念のオデュッセイア/ユートピアの構造/黄金時代
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
9
シオランの著書の中では一番激しく壮絶な本。ユートピア、高潔さ、人間精神への希望、そうしたもの全部を根本から批判して黙示録的な現実のディストピアを幻視している。六篇のエッセイなんだけどやっぱり凝縮率が凄くて、エッセイ全体ではなく部分部分の分析と憎悪の凄さに打ちのめされるタイプの本だ。自由、平等、友愛に資本主義共産主義その他、ありとあらゆる美徳を根っこからその非人間性を暴きたてるけど、当然のことながら人間の人間的な側面には一片の好意もない2011/08/27
せみ
6
1960年。シオランの著作で最初に日本に紹介された本。シオランの著作は概して解説を「拒否」する傾向がありますが、この本は出口裕弘さんがノリノリで訳していることもあってその傾向が特に強く、とりわけ第四章『怨恨のオデュッセイア』などは解説する気を起こさせない、これ以上付け足しても何にもならないと思わせるほど激烈です。題名の通り歴史・政治とユートピア(拒否)についてのシオランの思想を知るには重要な本です。一つ言えば、シオランのユートピアの不可能性は、非ユートピアの不可能性とセットにされなければならないでしょう。2011/08/27
抹茶ケーキ
3
フランスのエッセイストの論集。ひたすらに暗くて厭世的。「一体、地獄と悲惨な天国との間に、そんなに大きな逕庭があるものでしょうか。社会という社会は全部悪質なのです」(24頁)/「人間はおのれ自身であることの苦悩に直面するよりは、恐怖という汚物にまみれることの方を選ぶ場合があるのだ」(86頁)/「確固とした、しかも油断のない怨恨は、それだけで、ある一個人の支柱となることができる」(109頁)。2017/03/09
ぽてと
2
シオランについてはほとんど何も知らず、初めて読んだのだが、ニーチェよりも個人的にはインパクトがあった。自由主義者を名乗りつつも自由に批判的であり、民主主義やユートピアを嘲笑しつつ、復讐や嫉妬が偉大さを生み出すと主張する。甘ったるい理想主義など一片も感じさせない。2016/02/29
Kanou Hikaru
0
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