アレクサンドリア四重奏〈4〉クレア

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  • サイズ B6判/ページ数 401p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309623047
  • NDC分類 933
  • Cコード C0397

内容説明

時は経過し、あの都会も戦争の深い影に覆われている。島で暮らすぼくのもとに、ネッシムから、帰ってくるようにという便りが届いた。彼は空襲で負傷し、ジュスティーヌは軟禁されているという。すべての人間関係が変わっていた。不安な心がぼくの内部で北極星のように震えた。しかし、憐れみと欲望と恐怖のあいだで、あの都会がふたたび眼前に広がるのをぼくは見た。ぼくの記憶が仮面の人々を住まわせておいた、あの邪悪で美しい都会。かつて、そこをぼくはとても愛していたのに、踏みとどまるだけの気力がなかった。いまにして思えば、憎んでいたのかもしれない。永久にあの都会から立ち去り、その殻を脱ぎ捨てるためにも、ぼくはいま、再会しなければならなかった。アレクサンドリア、追憶の首都に―。

著者等紹介

ダレル,ロレンス[ダレル,ロレンス][Durrell,Lawrence]
1912~1990。1912年、イギリス系植民者の息子としてインドに生まれる。11歳のとき、父の意向でイギリス本国に渡り、カンタベリーの寄宿学校に入学するが、学校の教育が性に合わず退学。個人教授を受けながらケンブリッジ大学の入学試験を試みて失敗する。その後、不動産屋で働いたりナイトクラブでピアノを弾いたりするが定職にはつかない。1935年23歳で、家族とともにギリシア領コルフ島に移住。数年間この島で暮らしてから外交官生活に入り、アテネ、カイロ、アレクサンドリア、ロードス島、コルドバ(アルゼンチン)、ベオグラードなどに滞在する。1938年、小説『黒い本』をパリにて発表。T・S・エリオットやヘンリー・ミラーに絶讃されて作家としての地位を確立する。1953年、キプロス島に住まいを移し、『ジュスティーヌ』の執筆を開始、1957年にはこの島のルポルタージュ『にがいレモン』でダフ・クーパー賞を受賞する。同年、南フランスに移住。ここを永住の地として創作活動に専念し、傑作『アレクサンドリア四重奏』全4巻をまとめる

高松雄一[タカマツユウイチ]
1929年、北海道室蘭市に生まれる。東京大学文学部卒業。イギリス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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榊原 香織

80
どーせ悲劇に終わるんだろな、と思いつつ読んでたが、あら、意外。 読後感いいではないですか。 第2次、戦中、戦後 いろんな恋の結末。 神秘主義もチラホラ。ホムンクルス作って水中で予言する、てトム・クルーズの映画思い出したな。 この作品は映画化されてるんだろーか?アラブ的祭りなんかは絵になりそうだ。 訳者覚書に読者サービス有。 昔、編集者が自転車に息子載せて心配して見に来てくれたソーダ。 坂本、という名前の人w2021/09/01

NAO

47
今は亡き作家パースウォーディンが書いた「おれとブラザー・アスの会話」で、ロレンス・ダレルは、イギリス旧来の文学的伝統を激しく攻撃し、否定している。この手記を読んだダーリーは、パースウォーデンの皮肉に腹を立てるどころか、彼の意見を素直に認め、新しい芸術作品を作り上げる旗手とならんと秘かに闘志を燃やしている。もちろんダーリーはロレンス・ダレル自身。貧しい若者が英語教師をしながら小説家を志し、文学について深く考え、自らの芸術性を高めていくというプロットは、ジョイスの『ユリシーズ』を踏襲したものだ。2016/04/20

syaori

44
再びのアレクサンドリア!自分に手傷を負わせた都会に戻ったダーリーの前に示されたのは"時”。変わった者、変わらない者、それぞれの時。そして「ぼくのジュスティーヌ」は幻想だったと認め、しかしそれに咎めるべきものはないのだと思う彼のなかでも確実に時が流れていたのだと感じました。「快楽に耽溺するのではなく苦痛に耽溺せよ」と命じるこの都会は、様々な人たちの孤独と苦悩を見せつけたような気がするのですが、今はそのアレクサンドリアを恋しく思うばかり。だって「わたしたちを苦しめたこの土地をどうして愛せずにいられましょう?」2017/09/15

rinakko

16
再読。素晴らしい読み応え。追憶の首都に呼び戻され、再びダーリーが語り手となる。けばけばしい彩色と圧倒的な貧困と美の都会、アレクサンドリアに流れた“時”に思いを馳せる。大戦を挟んで、各々の登場人物を次なる運命や新しい持ち場へと、押しやるように運んでいった。“「私らは私らが夢みるものになるのだ」とバルタザールが言った。あの灰いろの敷石のあいだに、なおも、時間そのものである時計の鍵を探し求めながら。” …来し方を振り返れば、時間そのものが容赦なく美しい作品だった。2015/10/22

秋良

14
時計の針が進んで戦時下のアレクサンドリア。ネッシムの目論見は破れ、マウントオリーブは新たな恋に落ち、バルタザールがやらかす。家族に苦労しがちだったネッシムが、メリッサの娘と仲良くなれたのは純粋に良かった。ここに来てやっと「真実」よりも「事実」に近いものが明らかになる。身も蓋もない言い方をすればまだるっこしいんだけど、この薄衣を一枚ずつめくっていくような読書体験は癖になる。ガーディアンの選書に入ってたから読んでみた、自分からは手に取らなかっただろう作品。これだからガーディアンのチャレンジはやめられない。2024/05/22

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