内容説明
脳に作用してあらゆるものを言語で表現することを可能にするインプラント“TAP”。それを使用していた世界最高の詩人が謎の死を遂げた。詩人の娘から事件の究明を衣頼された私立探偵は捜査に乗り出すが…表題作「TAP」、体外離脱体験を描いた“世にも奇妙な物語”「視覚」、一人称による饒舌な語りの異色作「悪魔の移住」、ホラー作「散骨」、イーガンの科学的世界観が明確に刻まれた名作「銀炎」ほか、すべて本邦初訳で贈る全10篇を収録。
著者等紹介
イーガン,グレッグ[イーガン,グレッグ][Egan,Greg]
1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。SF作家。「現役最高のSF作家」と評されている。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。83年、デビュー。コンピュータ・ブログラマとして勤務後、専業作家に。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞
山岸真[ヤマギシマコト]
1962年、新潟県生まれ。埼玉大学教養学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
49
SFに社会的要素が皮肉られた短篇集。様々なトピックについて考えられる『悪魔の移住』はあけすけなフェミニストの語り手が想定外の存在だったので腰が抜けそうになりました。『散骨』は暴行の現場にいても止めずに撮影を止めず、犠牲者もポルノ写真紛いにしてしまうマスコミ倫理とそれを消費する物見高い聴衆について描かれていて胸が悪くなります。『要塞』はDNAを改変する意思を持った遺伝子と人種問題が絡み合う。表題作は言葉による人体の死傷ができるようになった世界。オーウェルの『1984年』や円城塔の『屍者の国』を連想しました。2013/08/05
ニミッツクラス
30
08年(平成20年)の税抜1900円の奇想コレ初版。イーガンの日本オリジナル短編集第4弾。86~95年の10編を収録で、刊行時点では本邦初訳。ハヤカワのイーガン城に切り込み、しかも奇想コレで出した河出のやる気に驚く。読むと確かにアイデンティティ薄めで、ホラーもあって奇想レーベルでも納得の作品群。表題作はTAP頭(意味は読んで)の老女死亡事件の真相に迫るサスペンス。「ユージーン」は遺伝子操作で天才として産まれた子供の双肩に地球の未来がかかるが…。ここへきてやっとイーガン入門書が出たと言う読後感。★★★★☆☆2021/11/15
拓也 ◆mOrYeBoQbw
30
SF短篇集。ポストヒューマン・ハードSF『ディアスポラ』『白熱光』が有名なイーガンですが、『TAP』はニューウェーブ、サイバーパンクから”奇妙な味”、ホラー調の作品と、また一線を隔する作風になってるのが特徴です。一部ではSF的な解釈は取り入れてありますが、ストーリーや雰囲気優先の短篇が多いので、本格的なイーガンの長篇を読む前に、入門書としては最適だと思いますね(・ω・)ノシ2016/04/24
宇宙猫
28
挫折。ずいぶん前に読みかけだったから もう一度読んだのだけど面白くなかった。イーガンって、こんな作家だったっけ。2017/07/31
すけきよ
12
どちらかと言えばSF寄り作品の作品が多い奇想コレクションだけど、ガチガチハードSFのイーガンが入るのはどうなのかな~、と思っていたら、(イーガンにしては)なかなか異色作品が並んでいました。ただ、いつもなら「もっとツッコムのに!」というか、追求する手前で物語をまとめる方向に持っていく印象。ある意味、全部ホラーと言えるような。ただ、不気味とか、生理的嫌悪感とは違う、もっと深いけど部分が違うネガティヴな感覚。「TAP」に出てくる「頭にTAPを入れるのはぞっとする」というような文章が全てを表している気がする。2008/12/07