出版社内容情報
2億年近く生き延びたあとに絶滅寸前になったイチョウが、息を吹き返し、人に愛されてきたあまりに数奇な運命と歴史を描く。
内容説明
最初の人類が誕生する頃にはすでに絶滅寸前だった「生きた化石」イチョウ。しかし中国奥地で細々と生き延びたあと、十七世紀末に長崎の出島から悠久の命をつないで、ヨーロッパ、そして全世界に進出していった。科学を基本にしながら文化的な視点を織り交ぜた名著。植物とヒトとの数奇で壮大な物語。
目次
第1部 プロローグ
第2部 植物としてのイチョウの生態
第3部 起源と繁栄
第4部 衰退と生き残り
第5部 ヒトとの出合い
第6部 利用価値
第7部 植物の未来を考える
著者等紹介
クレイン,ピーター[クレイン,ピーター] [Crane,Peter]
1954年、イギリス生まれ。レディング大学で博士号を取得。1992‐1999年にシカゴ・フィールド博物館館長、1999‐2006年には世界的に著名なイギリス王立キュー植物園園長を務める。生物多様性研究の功績でサーの称号を授与される。シカゴ大学、イェール大学を経て、オーク・スプリング・ガーデン財団理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
65
あまりに身近にあるために、「生きている化石」として、どんな価値があるのか、知らなかった点がすごく多い。イチョウに似た木は、他にどこにもない。被子植物にも、針葉樹(裸子植物)にも似ていない。孤高の木である。世界に1種だけ。すでに恐竜のいたころから衰退がはじまっていて、現世には奇跡的に生き残った。中国から朝鮮・日本に伝わり、長崎の港からヨーロッパへ。今は世界中に広まっている。その歴史と文化、利用について徹底的に網羅。著者もそうだが、人間はイチョウの木が好きなんだな。秋にふさわしい木。ギンナンの茶碗むしも格別。2021/10/15
やま
13
いやあ、すばらしい!銀杏のことで37章400頁もの本ができるなんて。◇化石のこと、どうやって化石から銀杏を特定したか、銀杏そのものの話、日本のこと、中国のこと、ヨーロッパでの保護の話、アメリカで保護の話、そして、最後の2章は種を守ること、これからの植物に対する人間の役割について。◇全編にわたって銀杏への愛が感じられるうえに、生物学的な専門的な内容も書かれている。解説を元東大教授の長田氏が書かれているように専門的な内容も正確を期している。興味深い本でおすすめ。2023/01/29
Mits
2
身近な木ではあるけれど、植物界のカモノハシと言われるほど変な植物であるらしい。確かに、そういえば「イチョウの仲間」である木なんて聞いたことがない。実際、そんなものないらしい。植物としての特徴、起源と来歴、人間とのかかわりなど、多岐にわたる記述で非常に面白かった。2022/11/01
S
0
身近なイチョウがここまで興味深く、ドラマチックな植物だとは全然知らなかった。植物としてのイチョウの生態、2億年前からの進化の歴史、人類との関わりによる文化的な側面、近代以降の日本から欧米への再拡散の様子など、取り扱う内容は幅広い。イチョウをじっくり観察し、もっと楽しんでみようと思わせる本。2024/04/08