出版社内容情報
異なる文化に育った男女の心の揺れを瑞々しく描く表題作のほか、文化、歴史、性差のギャップを絶妙な筆致で捉えた魅力の物語集。
内容説明
ラゴスからアメリカに移民した若い主人公がエクストラ・ヴァージン・オイル色の目をした白人の男の子と親しくなる表題作(「アメリカにいる、きみ」改題)のほか、「ひそかな経験」「明日は遠すぎて」など、人種、ジェンダー、家族にまつわるステレオタイプな思考を解きほぐす、天性のストーリーテラーの切なく繊細な12の短篇。
著者等紹介
アディーチェ,チママンダ・ンゴズィ[アディーチェ,チママンダンゴズィ] [Adichie,Chimamanda Ngozi]
1977年ナイジェリア生まれ。抜群の知性としなやかな感性で繊細な物語を紡ぎ出す。2007年『半分のぼった黄色い太陽』でオレンジ賞受賞。13年『アメリカーナ』で全米批評家協会賞受賞
くぼたのぞみ[クボタノゾミ]
北海道生まれ。翻訳家、詩人。東京外国語大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
136
生まれながらにして私たちの人生を縛るもの。人種、性別、家族、境遇…。その差異を超えて私たちは理解し合えるのだろうか。ナイジェリアからアメリカへ移民した作者自らの体験をもとにした数々の違和感。言語、宗教、文化、日常のあらゆる面で浮き彫りにされる埋められない溝。12編の短編では、砂を噛むような憤りや絶望に沈む心の襞がさらりと繊細に描かれる。その筆先は時に鋭く容赦なく、時に軽妙でコミカル、そして静かで切ない余韻を含み、作者の天賦の文才を感じさせる。エッジの効いた作品。優れた才能との出会いに胸が高鳴った一冊。2020/02/17
ふう
127
扉を開けて外に出ても、そこに何もかもから自由で思いきり呼吸できる世界が広がっているわけではありません。進めば壁が立ちはだかっているし、出会う人も決して自由ではないし。自由そうに見えるこの国に暮らしていてさえ、わたしたちの周りには見えない何かがまとわりついています。気づいてもなかなか取り払えない何か。それがまるで自分を守ってくれているようにさえ思える何か。そんな感傷に近い思いを、チママンダの作品は、考える力へと導いてくれます。世界はそんなに簡単には変えられないけど、自分はどう生きたいか考える力へと。2020/05/19
どんぐり
104
アディーチェの既刊翻訳短篇集『アメリカにいる、きみ』『明日は遠すぎて』から各々6篇が収録された12篇。アフリカンアメリカンや多民族国家ナイジェリアが抱える問題を扱い、人種、ジェンダー、親子、夫婦、兄妹など、さまざまな人間関係を描いている。欧米化するナイジェリア社会とアフリカンを生きる若者を描いた長編『アメリカーナ』の布石にもなった作品群である。「アフリカは外部の目から描かれることが多かったけれど、いまはアフリカ人が自分たちの物語として書く時代だ」というアディーチェが、しばらく創作活動から遠ざかっているだけ2020/06/12
TATA
82
読友さんから。ナイジェリア出身の女性作家アディーチェによる短編集。以前に読んだアフリカ史の書籍で、アフリカは独自の文字を持たなかった故に欧州史観に支配され、自身の歴史観に乏しいとあったが、こういった作家さんの純粋な主観に基づく作品は大変興味深い。きっと筆者が様々な場面で故郷を思い返したその一場面を切り取った12の作品なんだろう。いずれも繊細な心理描写に優れた作品ですが、中でも「がんこな歴史家」、「結婚の世話人」が好み。2022/01/09
アキ
78
ナイジェリア出身でアメリカ在住のとても有名な作家C・N・アディ―チェ。ナイジェリア・ラゴスの内情も気になります。アトランタ五輪サッカー金メダルを獲ったスーパーイーグルスも出てきて懐かしい。さて短編小説12編。表題「なにかが首のまわりに」第3者からきみを主人公に語られる。ラゴスからアメリカで人と出会い、生まれる心の変容を描いた作品。声高く黒人差別を糾弾するものはなく、哀しみと切なさをそのまま提示して余韻を残すような小編が多い。「ジャンピング・モンキー・ヒル」「アメリカ大使館」「震え」「結婚の世話人」が好み。2020/01/12
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