出版社内容情報
2022年仏大統領選で同時多発テロ。極右マリーヌ・ルペンと穏健イスラーム党首が決選に。世界の激動を予言した書。解説=佐藤優
ミシェル・ウエルベック[ウエルベック,M]
1958年生まれ。現代フランスを代表する作家。長篇『素粒子』がセンセーションを巻き起こし、世界各国で翻訳される。ほかに『闘争領域の拡大』『ある島の可能性』など。最新作『地図と領土』でゴンクール賞受賞。
大塚 桃[オオツカ モモ]
現代フランス文学の翻訳家。
内容説明
二〇二二年仏大統領選。極右・国民戦線マリーヌ・ル・ペンと、穏健イスラーム政党党首が決選に挑む。しかし各地の投票所でテロが発生。国全体に報道管制が敷かれ、パリ第三大学教員のぼくは、若く美しい恋人と別れてパリを後にする。テロと移民にあえぐ国家を舞台に個人と自由の果てを描き、世界の激動を予言する傑作長篇。
著者等紹介
ウエルベック,ミシェル[ウエルベック,ミシェル] [Houellebecq,Michel]
1958年フランス生まれ。1998年長篇『素粒子』がベストセラーとなり、世界各国で翻訳、映画化される。現代社会における自由の幻想への痛烈な批判と、欲望と現実の間で引き裂かれる人間の矛盾を真正面から描きつづける現代ヨーロッパを代表する作家
大塚桃[オオツカモモ]
現代フランス文学の翻訳家。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
395
2022年のフランスを舞台にした近未来小説。ル・ペンの国民戦線とベン・アッベス率いるイスラーム同胞党による、フランスを2分する大統領選挙戦が繰り広げられる。この究極の選択自体が、かつてのフランスにはなかったことだが、もはやけっしてあり得ないことではなくなりつつあるのだろう。それほどにEUの危機は深いということか。主人公は、ユイスマンスの権威であり、パリ第3大学教授であり小説の語り手である「ぼく」(フランソワ)。脆弱なインテリである彼が最終的に選ぶのが「服従」であった。極めて整合性の高いイスラームの体系に⇒2018/04/03
nobi
106
あり得ても今すぐではない近未来の話、ではない。この変貌が数年の内に起きてもおかしくないという現実感。街の風景は同じようでも微妙にただ決定的に変わっていることに気付く衝撃。皮膚感覚、エロスの感覚、一方で合理的に見える説明。その状況を語る「ぼく」に私は同化していく。現代ヨーロッパの閉塞感を打破するのは少なともキリスト教ではなかった。がその代わりは他の宗教か?殆ど宗教勧誘と見紛う最終章だけれど最後の一節の時制だけは未来形。そこに作家の疑問符を見る。波瀾の中、ユイスマンスあるいは人間の本質に開眼する契機があった。2017/11/05
マエダ
93
2022年フランス大統領選においてイスラーム政権が誕生するというのが本書の大筋。反イスラーム感情の強いフランスでは衝撃作であったというが日本も他人ごとではない。激動の政治を象徴するようなとてもお勧めの一冊。今までのなにげない日常までも変わってしまう政治への戸惑いは計り知れない。2017/06/30
『よ♪』
83
2022年のフランス大統領選にてイスラム政権が成立。大学で教鞭をとるインテリが動乱の中、流れに逆らえず、次第に傾倒し、染まり、改宗する。"あの"シャルリー・エブド襲撃事件と必ずセットで語られる本作。話題性充分。しかしながらエンタメ性が低く(感じる作風で)、万人向けではない。その反面、極右政党の台頭と対抗すべく共闘するマイナー政党、決選投票制度、ムスリムへのヘイトといった仏国の背景、そしてイスラムとイスラエルとの関係、それらを理解した上で読むとそのリアリティに驚く。『もしかしたら本当に起こり得るかも』と…。2019/04/17
sayan
71
ある意味「批判」をすることが仕事である大学教授が、自己に対して客観視することもそこそこに、あれよあれよいう間に変化していく。後書きで、「『服従』を読むと、人間の自己同一性を保つにあたって、知識や教養がいかに脆いものであるかということがわかる」という箇所は、B.Buzanが指摘する社会的安全保障と読み比べると非常に興味深い。また、その際、ローマ帝国に何度か言及されているのも新鮮だった。本書をなんだか急いで読んでしまったのだが近いうちに改めてゆっくり再読してみたい。そうそう、本書前半は村上龍の小説かと思った。2017/07/02
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