内容説明
十八世紀末イギリスの田舎町。ベネット家の五人の子は女ばかりで、母親は娘に良縁を探すべく奮闘中。舞踏会で、長女ジェインは青年ビングリーと惹かれ合い、次女エリザベスも資産家ダーシーと出逢う。彼を高慢だとみなしたエリザベスだが、それは偏見に過ぎぬのか?世界文学屈指の名ラブストーリー。
著者等紹介
オースティン,ジェイン[オースティン,ジェイン][Austen,Jane]
1775‐1817年。イギリスの女性作家。ハンプシャーに生まれ、生涯の大半を静かな田園で過ごす。『分別と多感』『エマ』『説きふせられて』など機知とユーモアに富む実写的描写に優れた作品を残し、英国作家最高の一人とされる
阿部知二[アベトモジ]
1903‐73年。岡山県生まれ。東京大学英文科卒。作家、評論家、英文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seri
77
英国らしい機知とユーモアに溢れ、人間心理を絶妙に描き出し、こんなにも女心にやさしい小説を私は他に知りません。すっかりオースティンの虜です。素晴らしかった!高慢と偏見、主役二人の表現でしかないと思っていたこの題もアイロニーを含んでおり秀逸。何よりも愛すべきは、間違いを気付いた時の自己を恥じるその謙虚さ。あまりに滑稽な人物がいる一方で、真摯に自分と向き合う姿勢が、どんなに外見の美しさを書き連ねるより読者を魅了していく。水村さんの巻末エッセイも、いいスパイス。自分にとって大切な本の一冊になりました。2016/01/05
夜長月🌙@読書会10周年
75
今回「高慢と偏見」を手にしたのはアガサ・クリスティの「春にして君を離れ」のみなさんのレビューにしばしば『これは「高慢と偏見」を思い出させる』というフレーズがあったからです。「春に…」で強烈な個性を見せるジョーンが「高慢…」のベネット夫人に重なる所があるからでしょう。全体として各々の物語が発しているものは全然異なりますし、ジョーンの愚かさが読者自身にも刃を向ける所が大きな違いでしょう。「高慢…」が200年以上も経て読み継がれるのはエリザベスやジェインの心情は共感ができて時代を越えて不変だからです。2019/06/09
TATA
51
究極の家族小説。舞台は18世紀の英国、ということでやたらとまどろっこしい会話の数々。あれ?この文章って褒めてるの?逆か?とか(笑)。その辺の艱難辛苦を乗り切って読み進めると、まあ恋愛、結婚とは古今東西を問わず面倒臭くて、人の口になんとのぼりやすいものかと思い知る。エリザベスとダーシー氏のエンディングには妙に嬉しくなって、リディア達にはうーんと。我が家の子供たちもそろそろこんなことを考える頃かと思うと少し怖気さえ感じつつも、まあ、まだ早いよねと。2023/03/28
すえ
38
冗長なセリフ回しは古風だが展開は面白く読み易かった。英国片田舎に住むベネット氏は小さいながらも地主で中流紳士。五人の子は女ばかりで男子相続人が無く、氏の資産(年収二千ポンドの土地)はある遠縁の人に限嗣相続させることに決まっていた。そうなるとゆくゆくは自身と娘達には財産が残らないという危機感を感じ、娘達の良縁を見つけることに全霊を注ぐベネット夫人。非常に偏狭な気質で夫からは無教養、無知識と蔑まれながらも、この物語を動かしているのは彼女。高慢と偏見という主題も素晴らしく描かれるが、脇役が皆個性的で印象的だった2020/07/16
Mijas
38
映画を観たことがあったので、イングランドの田舎の美しい風景を思い浮かべながら読んだ。18世紀末という時代ならではの厳しさがある階級社会と相続制度、当時の女性の地位と価値観を知ることができ、歴史好きには興味深い。本当は思いやり溢れる人なのに、プライドが邪魔して自分を素直に出せないダーシー。彼を高慢な男だと偏見を持つエリザベス。この二人が結ばれるまでのストーリーは退屈なぐらい地味な描かれ方だが、言葉や感性はこれぞ英国流というように「平坦なる写実中に潜伏し得る深さ」(解説より)だ。上質な恋愛小説だと思う。2015/02/24