感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蓮子
88
性(生)と死、美しいものと醜いもの、聖なるものと穢れたもの、相反するものが渾然となって静かに渦巻く。病的と言っていい程に主人公の感情の振れ幅も大きく、ついていくのが大変でした。神聖なものを穢すことによって得る快楽はそのタブーのギャップが大きければ大きい程、深いものになる。卑猥と汚穢は密かに手を結んでいるのだ。正直、ここに掲げられたテーマ等は難解で表面をなぞるだけで理解が及ばなかったけれど、強烈に惹き付けられるものだ。また他のバタイユの著作と合わせて再読したい。死とエロスの神秘の片鱗を覗きたい人へ。2017/07/08
優希
88
死とエロスの極みとでも言うべきでしょうか。聖なるものを穢すことに覚える快楽というものが色濃く感じられます。女性を死と愛の化身として描くことで際立つエロティシズムがバタイユならではの世界を味わう衝撃を与えてくれました。穢すことや破壊することへの執着が醜い美しさを醸し出している作品です。2016/11/17
双海(ふたみ)
13
20世紀最大の思想家の一人であるバタイユが、死とエロスの極点を描いた1935年の小説。ロンドンやパリ、そして動乱のバルセローナを舞台に、謎めく女たちとの”異常な”愛の交錯を描く傑作。「なにしろぼくは死体が変にすきなもんだからね・・・」(110頁)、「泣くのはおやめ。だけどきみには狂っていて欲しいんだ。ぼくが死なないためには、そうしていてもらわないとだめなんだ」(122頁)、「彼女は墓のような臭いがするんだ。ちゃんと知ってるんだ、ぼくは。一度抱いたことがあるからな・・・」(142頁)2014/04/09
ふくろう
4
死と愛は、明確な境界線を持たない。硬質なロマンを感じる作品。空の青さに泣きたくなる人は読んでみるといい。2009/03/27
masa eco
3
スペイン内乱によるゼネスト、政治的混乱、不安定で緊迫した状況下。その中で繰り広げられる異様な精神状態と苦悩に満ちたエロス、そして死。その中で淫蕩に生きる人々。主人公のアンリは穢れた泣き虫の純情青年だ。そして彼を取り巻く女性たちには死の感覚がつきまとっている。最も印象強い場面は星光る夜空に覆われた墓地だ。この恍惚とした場面ではさながら天地が逆転しているかのように見え、生死、清浄不浄、など相反するものが全て天に墜落していくかのようだ。逆転現象。黒いイロニーが生まれ出たときはとても切なく感じた。2022/06/05