内容説明
シベリア・ウスリー地方の探検調査に同行する原住民の猟師デルスー・ウザーラには、文明人が失ってしまった予感・予覚の能力があった。自然の運行を予感し、それにさからわずに生きる。ときには虎に話しかけ、ときには川の中の魚の表情から意味をくみとる。そんなデルスーが文明に追いつめられ、さびしく死を迎えるまでを、哀惜をこめて描きだす。
目次
出発
ジギト湾のほとり
行進開始
山地にて
洪水
海辺へ帰る
シャオケムに沿って
タケマ
リー・ツンビン
おそろしい見つけ物〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
36
下巻の目次に「デルス―・ウザーラの死」とある。驚いて、読書家にあるまじき不正行為‥最終章を先に読み始めちまった。「地上における生の法則が同時にまた死の法則」の通り、自然との交感で暮らしてきたデルス―だったから、その論理が通らない町ハバロフスクでは生きられなかったのだろう。仕方のない結果とはいえ、5日間続いた台風を予感して避けたり、台風のせいで増水した川や浮砂から著者を救ったり、上巻も併せて何度も生命を救ってもらったし、たくさんの魅力的な自然観や言動に満ちていたデルス―との別れはかなり辛かったことだろう。2025/08/10
ちゃっぴー
10
シベリア沿海の自然描写は、自分も一緒にその場に居合わせているように感じました。森の自然を出て、都会生活に馴染めなかったデルスーの悲しい最期に胸が締めつけられます。解説に書かれてましたが、彼は滅びていくものの代名詞であると思いました。2014/04/16
miu_miu
0
上巻では2回の探検が、下巻では最後の探検とデルスーの死までが綴られています。動物はすべて「人」と呼び、殺生はせず、食料連鎖を大切にする心優しい彼ら土着民を、中国人、朝鮮人、ロシア人が直接奴隷化したり、また儲けのための動物の大量捕獲により間接的に収奪し、滅ぼしていく。そして開拓による都市化が彼らの生活様式を続けられなくします。デルスーは老化による目の衰えからやむなく著者とハバロフスクに来ましたが、都市生活の仕組みが理解できず、山に戻ると家を出た晩に、暴漢に襲われ命を落とします。たった100年前の出来事です2015/11/08
アラスカ
0
こつこつ読んだ。非常におもしろかった。2012/03/29