出版社内容情報
【目次】
内容説明
東京下町の針職人の家にもらわれ育った清子は、一家の自慢の息子である弘一への想いを秘めたまま出征を見送り、戦時下と戦後の混乱を生き抜く。戦後、弘一は復員したが、まるで人が違うほど一変していた。戦争の傷跡に苦悩しながらも、針一本に生きる選択をする姿を描く傑作長編。
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931年和歌山県生まれ。幼少期をインドネシアで過ごす。東京女子大学短期大学部英語科卒。56年「地唄」で芥川賞候補となり、文壇デビュー。一外科医をめぐる嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、歴史や芸能を扱った『和宮様御留』(毎日芸術賞)など、さまざまな分野の話題作を発表し続けた。84年急性心不全のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さぜん
44
東京・下町の針職人の一家にもらわれて育った清子の時代に翻弄される人生を描く。戦争中の銃後の暮らしが克明に描かれ、我慢と苦難を強いられるだけでなく、生きるために失ったものの大きさに愕然とする。針を踏み片足が不自由になった清子は1人で生きる決意と共に仕事に邁進していく。好意を持っていた弘一が復員したが、戦争によって人が変わってしまう。平穏な暮らしはそこにはなく、剥き出しになった欲望が人を傷つけ、自分を傷つける。有吉作品を読む度に、人間の心の奥底にある闇の深さや、どんな状況でも生きようとする力強さを感じる。2026/06/07
ちゃとら
41
【図書館本7】すっかりハマった有吉佐和子作品、これも絶品。親を亡くしお針子として引き取られた家。器量も腕も良かったのに針を踏んだ事故によりびっこになる。今なら差別用語だが、その言葉が生涯付き纏う。彼女に関わる登場する働く女性達が逞しく戦前、戦後を生きていく。その姿がカッコ良い、心に残る一冊だった。2026/01/28
ちえ
33
太平洋戦争中そして戦後。東京下町の生活が目の前に映るよう。有吉佐和子さんはいつも女性を描く筆が素晴しい。戦後の混乱期を自分の才覚で生き抜いていく女性もいれば自分を失っていく者もいる。仕立職人の家で育った清子には針一本で生き抜く腕がある。それにしても戦争がどれ程人を壊してしまうか…。読みながら朝ドラ『カーネーション』や木内昇『かたばみ』を思い出す。解説がその木内氏だというのは嬉しかった。2025/09/18
ぐうぐう
28
タイトルから『仮縫』のような物語を想像すると大きく裏切られることになる。確かに、主人公・清子は針職人の家にもらわれ、そこで腕を磨いていく。しかし、『仮縫』にあった業界ものとしてストーリーが展開していくことを有吉佐和子は拒否するのだ。本作には戦争という巨大な背景が横たわり、登場人物達を容赦なく押し潰していく。さらに清子で言えば、足に針が刺さるという事故と弘一が残していった一冊のノートというふたつの呪縛が彼女を苦しめるのだ。刺さった針により足に障害が残るという設定は清子の職を考えると皮肉であり、(つづく)2025/07/14
まーみーよー
27
有吉作品、これも良かった。針によって足が不自由になり、針によって自立する女性を描く。戦中の描写からがらりと展開が変わる戦後の描写の巧みさ。登場人物の心情の移り変わりが終盤目を離せない展開となる。戦争は人を変貌させる。銃後の人間よりも復員者の方が立ち直りには時間がかかるのは仕方ないよなあ。2026/04/16




