出版社内容情報
【目次】
内容説明
東京下町の針職人の家にもらわれ育った清子は、一家の自慢の息子である弘一への想いを秘めたまま出征を見送り、戦時下と戦後の混乱を生き抜く。戦後、弘一は復員したが、まるで人が違うほど一変していた。戦争の傷跡に苦悩しながらも、針一本に生きる選択をする姿を描く傑作長編。
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931年和歌山県生まれ。幼少期をインドネシアで過ごす。東京女子大学短期大学部英語科卒。56年「地唄」で芥川賞候補となり、文壇デビュー。一外科医をめぐる嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、歴史や芸能を扱った『和宮様御留』(毎日芸術賞)など、さまざまな分野の話題作を発表し続けた。84年急性心不全のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
23
タイトルから『仮縫』のような物語を想像すると大きく裏切られることになる。確かに、主人公・清子は針職人の家にもらわれ、そこで腕を磨いていく。しかし、『仮縫』にあった業界ものとしてストーリーが展開していくことを有吉佐和子は拒否するのだ。本作には戦争という巨大な背景が横たわり、登場人物達を容赦なく押し潰していく。さらに清子で言えば、足に針が刺さるという事故と弘一が残していった一冊のノートというふたつの呪縛が彼女を苦しめるのだ。刺さった針により足に障害が残るという設定は清子の職を考えると皮肉であり、(つづく)2025/07/14
花林糖
12
(図書館本)「はりおんな」ではなく「しんみょう」。東京の下町の針職人の家に貰われ育った清子の物語。時は戦時中・戦後の混乱期。針がチクっとではなくグサッと刺さる様な痛さを感じる箇所(心・身体共に)もあるけれど、読後感は案外悪くはありませんでした。(千人針は千人の女性に一針ずつ縫い玉を付けてもらい作成、しかし寅年の女性は自分の年齢だけ結び目を作ることが出来重宝された)「針女」は1971年3月に新潮社から単行本が刊行。1981年12月文庫化されたものを再文庫化。2025/08/16
たげり
1
主人公が針と糸で生きていく人物であるし、なんだか朝ドラ『カーネーション』が思い出された。奈津みたいなお金持ちのズケズケものを言う女学校の同級生もいたりする。この作品が『カーネーション』のフィクション部分のインスパイア元だったりするのかな。2025/07/28