内容説明
テルアヴィヴからエルサレム、そして「壁」を越えヨルダン川西岸パレスチナへ。街を歩き、土地の人々と対話を重ねるなかで浮上する、ユダヤ人の定義不可能性。知られざるイスラエル社会の差別構造。そして壁に囲まれ暮らす人々の悲痛な語り…。さりげない日常から現代史の突出点を凝視する、珠玉の紀行文学。文庫版書き下ろし「見ることの蜜は可能か」を増補。
目次
第1部 イスラエル/パレスチナ(テルアヴィヴへの到着;ユダヤ人の定義不可能性;日常生活;若者たちと軍隊;テルアヴィヴという都市;イラン・パペは語る;イスラエル国内のアラブ人;エルサレム;壁と検問;西岸をめぐる;ジェニンへの道;エステルの当惑)
見ることの蜜は可能か 二〇二四年版のための追補
著者等紹介
四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
1953年、大阪府箕面市生まれ。エッセイスト、批評家、詩人。文学・映画・漫画を中心に、多岐にわたる文化現象を論じる。『月島物語』で斎藤緑雨賞、『映画史への招待』でサントリー学芸賞、『モロッコ流謫』で伊藤整文学賞と講談社エッセイ賞、『ソウルの風景―記憶と変貌』で日本エッセイスト・クラブ賞、『白土三平論』で日本児童文学学会特別賞、『翻訳と雑神』と『日本のマラーノ文学』で桑原武夫学芸賞、『ルイス・ブニュエル』で芸術選奨文部科学大臣賞、『詩の約束』で鮎川信夫賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
madoque
5
当時は南周りが安かった、北京、ドバイ、カイロ経由、三次中東戦争の後、カイロでは臨戦態勢でカモフラージュされた対空砲か空を向いていた、機内からはアラビア半島、紅海が地図そのままに望め た、いま機内から望めたパレスチナは最悪の爆撃に晒されているのかと考えてしまうが。2024/04/02
きょん
3
前提だと思っていたこと、ここ数ヶ月で見たり読んだりしてわかった気になっていたこと。浅い知識がぼろぼろと剥がれていく。20年前の紀行文。起こったことに責任はなくても、知らずに生きてきたのは自分の責任だと突きつけられる。2024/06/14
Red-sky
3
何度も読み返したい一冊。見ることの塩とはそういう意味か。実際に目にしてきたから語れることがある。2024/05/07
yone
2
テルアヴィブ大学に赴任した著者の半年に渡るイスラエル/パレスチナ紀行。イスラエルもアシュケナジム、ミズラヒム等出自による階層があり一枚岩ではないことやヨルダン川西岸地区に赴く話、イスラエル兵が野菜を売る老婆に暴行を加えパレスチナの若者たちを挑発する話などリアル。タイトルは眼に塩を擦り付け痛みで見ることが出来ない意だが、著者の言うように見ることの蜜はどうしたら実現出来るのだろう。悩ましい。2024/04/21