出版社内容情報
逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。
内容説明
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」。高校生のあかりは、アイドル上野真幸を解釈することに心血を注ぎ、学校も家族もバイトもうまくいかない毎日をなんとか生きている。そんなある日、推しが炎上し―。第164回芥川賞受賞のベストセラー。時代を映す永遠の青春文学。2021年本屋大賞ノミネート。
著者等紹介
宇佐見りん[ウサミリン]
1999年生まれ。2019年『かか』で第56回文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で第33回三島由紀夫賞を受賞。第二作『推し、燃ゆ』は第164回芥川賞、第7回沖縄書店大賞を受賞し、2021年本屋大賞にノミネートされたほか、世界15か国/地域で翻訳が決定、単行本累計60万部を超えるベストセラーとなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
390
長く気になってはいたが、やっと読めた。序盤から、魅惑的な”匂い”に心を捕らわれる。祖父母の家のガレージに生えている「ドクダミ」。プールから上がった生徒から、「塩素のにおい」。「地面から立ち上がる、草と近所の猫の尿のにおい」。文字で埋めたノートが「てらてらとし、黒鉛のにおいで酔う」などなど、私には官能的に響いた。しかし、「推し」への共感が出来ず、また、あまり期待しすぎた結果か? 読み終わった後には、少し物足りなさが…。2024/04/04
そる
299
私にも推しがいて主人公あかりと同じように喪失感があるから自分の事のようだった。推し愛にはいろんな形があり私もあかりも違うとこがあるが「上手くいかない自分の代わりにうまくいってる姿を見せてくれる存在でありヒーロー」という目線は共通かも。推してることで自分を保てる。そんな自分が辛くもあり、少しかわいくもあり、推しって尊い笑。「見返りを求めているわけでもないのに、勝手にみじめだと言われるとうんざりする。あたしは推しの存在を愛でること自体が幸せなわけで、それはそれで成立するんだからとやかく言わないでほしい。」2023/08/18
カピバラKS
250
●アルコールやギャンブルと同じように推し活も、病気として治療が必要な依存症の域に達することがある。主人公は推し依存症であるが、何かに沼ることで憂き世を忘れて生きる活力を得て、そこで歯止めが効かなくなることは誰しもあり得る。●さて、五十路の自分はつまらない人生を歩み、今はマッサージ屋で肩をほぐしてもらうこと、TRPGのニコニコ動画を観ること、ラジオで問わず語りの神田伯山を聴くことを、ささやかな楽しみに生をつないでいる。●推し活に燃えたひとときに一片の悔いも残していない若い主人公が、僅かに羨ましい。2023/10/01
zero1
236
話題作を今になって読む。短文を用いたリズムが持ち味、というか生命線。ある時期にしか書けない作品。芥川賞で言えば綿矢りさを思い出す。言葉の選択や描写の巧みさは21歳とは思えない(後述)。📚️主人公はアイドルの真幸に夢中な女子高生。その【推し】がファンを殴ったという始まり。騒動をきっかけに【推し】は変わっていく。どれだけ好きで依存しようが、この世に変化しないものはない。作品に登場するピーターパンは、【万物は流転】と主人公の発達障害を兼ねる隠喩か。✴️選考委員の選評は後述。2023/10/05
みこ
214
推していたアイドルがファンに手を挙げたことで世間からバッシングを受けたことが、平凡な女子高生の生活にも影響を与える。今時を狙ったタイトルや内容ではあるものの、何かを心の支えにして生きていくことについて今も昔も変わらない人の弱さを描いている。それでいて、やらかしたことに見合っているとは思えない世間の批判など現代社会の問題点もあぶり出している。一見バッドエンディングのようだが、主人公も推し同様に普通の一人の人間に生まれ変わる、そのために取り合えず蛹になったグッドエンディングと信じたい。2023/08/27