出版社内容情報
文楽の天才三味線弾きで、美貌の露沢清太郎に魅せられた造り酒屋の箱入り娘・茜。芸一筋の男と愛に生きる女の波乱万丈の人生を描く。
内容説明
文楽の天才三味線弾きで、美貌の露沢清太郎が弾く一の糸の響きに心を掴まれ、恋情を抱く造り酒屋の箱入り娘・茜。しかし清太郎には家庭があった。やがて清太郎は徳兵衛を襲名、紆余曲折を経て茜は妻となった。大正から戦後にかけて、芸道一筋に生きる男と、それを支える女の波瀾万丈の人生を描いた傑作長編。
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
1931年和歌山県生まれ。幼少期をインドネシアで過ごす。東京女子大学短期大学部英語科卒。56年「地唄」で芥川賞候補となり、文壇デビュー。一外科医をめぐる嫁姑の葛藤を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、『和宮様御留』(毎日芸術賞)など、さまざまな分野の話題作を発表し続けた。84年急性心不全のため逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
67
清太郎が奏じる三味線の「一の糸」の響きに魅せられた茜。彼を熱烈に恋するようになり、押しかけていく形で一夜をともにするのだが……。場面転換の鮮やかさ、ドラマティックさとスピード感に心を奪われ、かなり長い小説なのだが先が気になり一気に読んだ。女性の一生を描いた小説というだけでなく、戦前戦後の文楽を中心とした日本芸能史としても参考になる。有吉さんはこれまで『恍惚の人』など数冊しか読んでいなかったけれど、全然色合いが異なるものをお書きになっている。これを機にいろいろな作品を読んでおこうと思う。2022/06/10
はる
60
文楽の天才三味線弾きで美貌の清太郎に心を奪われた、造り酒屋の箱入り娘、茜。我が儘で世間知らずの典型的なお嬢様の茜だが、やがて芸一筋の清太郎を支える妻となっていく……。大正から昭和にかけて、震災と戦争の時代。家の没落や子供たちとの不和にも負けず、奮闘するひとりの女性の波乱の人生。壮絶な芸の世界の描写と共に、有吉佐和子さんの円熟した筆致を堪能した。2022/07/24
ぐうぐう
34
文楽における太夫、そして人形遣いに対し、三味線弾きは存在感が薄いように思える。しかし有吉佐和子は、その三味線弾きに恋し、やがて妻となる女性を主人公にする。恋をするきっかけの場面が秀逸だ。目を患い、見えなくなった少女・茜が文楽へ行き、太夫の浄瑠璃ではなく(目を患っているので、ましてや人形は見えない)、三味線の音色に心を奪われる。その三味線弾きが露沢清太郎だ。姿形ではなく、耳だけで虜になった事実は、理屈を凌駕した恋情の純粋さを茜に、そして読者に信じさせるに充分だ。(続く)2022/09/05
かすみ
13
文楽という、あまり馴染みのない芸能が中心の物語ですが、個性豊かな登場人物のおかげで、一気読みでした。茜の強さには勇気づけられます。2024/08/10
えいこ
8
人形浄瑠璃文楽にすっかりハマっているところ。有吉佐和子の筆力にあらためて感服。面白くてぐいぐい引きこまれる。茜が、我儘なお嬢さんから、紆余曲折を経て、継子たちの母親、三味線弾きの女房として逞しく成長していく一代記であり、それに、大夫と三味線弾きの芸の追求、夫婦のごとき愛憎をからめ、まるで文楽の演目のような物語が紡がれていく。大夫の語りは三味線がリードし、抑え、また、語りに引っ張られて三味線が追いかける。つい現実の大夫や三味線弾きを思い浮かべてしまった。舞台を見るのがますます楽しみになってきた。2025/01/30
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