出版社内容情報
死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、著者自身がセレクトした脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集
内容説明
「夫も食べてもらえると喜ぶと思うんで」。人口減少が急激に進む社会。そこでは、故人の肉を食べて、男女が交尾をする、新たな“葬式”がスタンダードになっていた…表題作「生命式」や「素敵な素材」など、著者自身がセレクトした十二篇を収録。はたして「正常は発狂の一種」か!?未体験の衝撃と話題になった、文学史上最も危険な短篇集。
著者等紹介
村田沙耶香[ムラタサヤカ]
1979年千葉県生まれ。2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、16年『コンビニ人間』で芥川賞を受賞する。ミリオンセラーとなった『コンビニ人間』は、30カ国以上で翻訳出版が決定。その才能は海外でも、大きな注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サンタマリア
43
異常と正常を書いたいつもの作風だったが、感情がごた混ぜになった。『生命式』で嘔吐感、『二人家族』で安堵、『ポチ』で冷めた目になって、『孵化』でハラハラ。特に好きなのは『素晴らしい食卓』。爆笑、爆笑。2022/05/19
Shoji
39
12篇の短編が収録されています。どの作品も、とんでもなく狂った世界を見せつけます。一作目から村田沙耶香ワールドに誘われ込まれます。作者の私生活は全く知りませんが、パンクでアナーキーで鬼畜で変態で変わってて、なんてこと思いつつ読むうち、今我々が置かれた世界に一石投じているような気がしてきました。少子高齢化、ジェンダー問題、ダイバーシティが尊重される社会、食糧問題、LGBT、もしかして色々詰まっている作品か。そんなこと思った。2022/06/11
おっしー
37
12編の短編集。この人は何を見て何を感じて小説を書いているだろう。村田沙耶香が見る景色はきっと自分が見ているそれとは全く別のものなのだろうと思わされる。それくらいぶっ飛んでいる作品だし、強烈。表題作「生命式」はグロテスクというか生々しさが伝わる描写と死んだ人を食べるという価値観がパンチ強すぎる。それが異常と感じる感性が本当に正しいものなのかとか、考えると頭がクラクラします…。「かぜのこいびと」が心地よく読め、好みだった。言葉ひとつひとつが美しく、かなり完成度の高い文学だと思う。2022/06/26
テツ
22
村田沙耶香さんの書かれるお話は全てにおいて、多様性を尊び価値観の異なる他者も受け入れられる社会をこさえよう的な思想がスタンダードとなっている今日の社会に対し、そうしたモノが心底からズレている他者と交わっても本当にそう思い続けることができるのかと突きつけているかのようだ。そして自分にとっての「普通」が、もしかしたら「異常」なのかもしれないと疑うきもちも芽生えさせる。どうやっても自分には適応することができない異常さを「普通」だと扱う世界に放り出されたらと想像すると、気が狂いそうになる。2022/05/17
takka@乱読
16
この本は「正常は発狂の一種でしょう?この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」という表題作『生命式』の一文が全て。全部で12話の短編集だが、どの主人公もそれぞれの社会から逸脱=異常な人ばかりだ。個人的には『素晴らしい食卓』という作品が一番好き。多様性・自己啓発に溺れて、自分の軸がない人を揶揄している話がすごく滑稽でもあり、反面教師にしたい作品だった。2022/06/23