出版社内容情報
変幻自在な暗殺者、流転する耀変天目、滅びゆく王国の姿を見せぬ王と大伽藍……当代きっての中国文化史家が織りなす傑作幻想小説集。
内容説明
宰相家を手中にしながらもあえない最期を遂げる侍女、宋と現代日本とを流転する耀変天目、吐蕃に嫁す道中蜃気楼を見た唐の公主、滅びゆく王国の姿を見せぬ王と大伽藍、海獣になった役人、仏教遺跡を求め砂漠を彷徨う二人の男。奇しく儚く美しく、博覧強記の中国文化史家が織りなす極上の中華幻想小説集。
著者等紹介
中野美代子[ナカノミヨコ]
1933年北海道札幌市生まれ。北海道大学文学部中国文学科卒業。北海道大学文学部、言語文化部教授を経て、同大学名誉教授。中国文化史家。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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読書という航海の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
76
こびとの巨霊、耳を聾せんばかりの海嘯の音、幾度も割れる燿変天目、金箔に透け出る歓喜仏の浮彫、砂漠をさまよう蛾、碧玉の指輪…これでもかと繰り出される幻想的な物語にすっかり魅了されました。作者の作品は初めてでしたが、もっと読んでみたいです。2021/11/24
びっぐすとん
22
図書館本。私が借りたのは古いハードカバー本だが登録がないので登録数の多いこちらで登録。初読作家さん。中国文化の専門家らしい素地のしっかりした作品集は私の好きな中央アジアの香りのする幻想的な物語。古代の話なのにベンツやピストルが出てくる「女俑」は学のない女に合わせて平仮名の多用で語られるので読みにくいが自業自得な話が面白く、邯鄲の夢のような燿変天目茶碗の話、砂に埋もれるシルクロードの遺跡の話など、どれも時代と空間を自在に飛び越える摩訶不思議な作品集だった。広大な大地はあらゆる物語を受け止める懐の深さがある。2021/11/15
Kotaro Nagai
15
中国文学者・中野美代子の中国史を題材にとった作品集。中国西域に伝わる伝奇ものではなく、著者の創作です。古いところは1960年の「青海」「敦煌」から1980年代の掌編まで18作品を収録。中国史に詳しい著者らしく史実に創作を混ぜ、遊び心も添加した読み応えのある作品集。特に気に入ったのは、現代日本と南宋末期が交錯する「耀変」。耀変天目に題材を取った作品で時空を超えたスケールの傑作と思います。2021/10/26
たけはる
13
表紙と冒頭をパラ読みして面白そうだなと購入。読んでみたら大ヒットでした。端正で硬質な文体、めくるめく万華鏡のように移り変わる場面場面、なんとも贅沢で上質な幻想文学でした。2022/12/29
kokekko
10
積んどく消化。これを積んだままにしてしまわなくて本当によかった……!! 中華幻想小説集という言葉のままに、蜃気楼に翻弄されるような美しく不可解な世界が広がっている。中原の世界感は、自分にはあまりにも「儒!」という感じがしてとっつきにくいと思っていたのだが、こういうものに触れると「ものによる!」という気持ちにさせてもらえてありがたい。『耀変』『青海<クク・ノール>』『ワクワクの樹』が好き。"胡蝶の夢"を体感させてくれるような一冊。2022/03/21