内容説明
わたしたちが分析し解剖したいのは、消費社会と呼ぶのがふさわしい高度な産業社会の実態なのだが、この画像はふたたび動物一般の、社会に似ているようにおもえる。動物一般の社会は(ほとんど)意図的な生産をやらないで消費行動だけをやって、あとに残余として昨日とおなじ身体状態をのこす。(中略)相違はわたしたちのなかにメタフィジックが存在するということだけだ。このメタフィジックによれば消費は遅延された生産そのものであり、生産と消費は区別されえないということになる。(『ハイ・イメージ論3』)。わたしはわたしなりに東京の現在のすがたと未来像のさまざまな構想を、いつも分析している。(中略)高層ビルの過密集地帯とビルの内部のフロアーに封じこめられた庭園とか、日本料理の店とか、プールとか、ほんらい地上にあるべき自然がビル内にあるたたずまいと、超高層ビルの出現とにつよい関心をいだいている。そこが世界都市東京を占う象徴的な場所だとおもっているからだ。(「わが東京」)。
目次
1 ハイ・イメージ論3(舞踏論;瞬間論 ほか)
2 情況としての画像―高度資本主義下の“テレビ”(テレビはどこへゆくか;スポーツ視たまま ほか)
3(人間の死 自然の死 農業の死;谷中―わたしの散歩道 ほか)
4(私のぴあテン1987;“死”に関するアンケート ほか)
感想・レビュー
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金北山の麓に生まれ育って
2
【拾い読みでしたがいい感じ】ちょうど大学卒業の前後の時期、最も吉本隆明に心酔していたころのものがそろっていて懐かしい。この全集の楽しみは長女のハルノ宵子さんの思い出の短文、結婚されないで父母の最後をみとったのだ、今回は小関直という編集者の話でそうなんだぁと驚き。人間の汚い面を詳しく知って何の意味があるのかとロックミュージシャンの自伝を読み漁りながら昔から後ろめたく思ってきましたが、この全集についてはじきに還暦の歳になったんで先に逝かれ先輩の死に方(=生き方)を学ばせてもらうんだと思うようになりましたです。2021/06/27