出版社内容情報
「セックス」も「家族」も、世界から消える……日本の未来を予言と話題騒然! 芥川賞作家の集大成ともいうべき圧倒的衝撃作。
村田 沙耶香[ムラタ サヤカ]
著・文・その他
内容説明
セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。
著者等紹介
村田沙耶香[ムラタサヤカ]
1979年千葉県生まれ。2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、16年『コンビニ人間』で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
704
一応は近未来SFの体裁をとる。ここで問われるのは愛、性、生殖といった人間存在の根幹に関わる命題である。セックスに愛はほんとうに必要か。それはそうありたいと希求する人間の幻想にすぎないのか。生殖は愛とは無縁か。そもそも異性愛は大いなる自己欺瞞にすぎないのか。そうした問いが次々に投げかけられる。そして、小説の構造としては、さらにその外側に生殖をも国家が管理しようとするディストピア社会がひたひたと足元に迫っていることをも警告する。洗脳による「正しい世界」の実現である。「洗脳されてない脳なんてこの世の中に⇒2020/09/20
starbro
460
村田 沙耶香、2作目です。未読の本書が文庫化されて、図書館の新刊コーナーに佇んでいたので、読みました。究極のセックスレス小説、衝撃的でした。性欲が消滅した世界では、食欲、睡眠欲等、様々な欲望が消滅して行くのでしょうか?そうなるとまさにホラーです。芥川賞受賞後、新作が出ていませんが、著者は書けなくなってしまったのでしょうか?【読メエロ部】2018/08/16
absinthe
345
沙耶香様のこれまた凄い小説。ラストも衝撃。確かに現代社会はここに描かれた世界に近づこうとしつつある。読者はひとつの究極の姿を目の当たりにする。かつて神事であった子を授かるという儀式が科学の元にヴェールを暴かれ続け、人間の意識も変わり続けてきた。ディストピアでありユートピア。こういう世界が描けるのはかなりの力量。夫婦の間の清潔感の相違。虫たちと普通に共存していたかつての家屋と異なり、現代の家屋では虫はすべて害悪扱い。この歪んだ清潔は未来を良くも悪くも変えていく。2019/08/23
sayan
258
ほぼ1か月前に読み終えたものの、感想が感覚のままで言葉にならないなと。“人工授精で、子供を産むことが常識となった世界。夫婦間の性行為は「近親送還」とタブー視され、やがて世界から「セックス」も「家族」も消えていく…”この世界観を描く物語は、自分でも意外なほど頭にすんなり入ってくるというか、読後も違和感がなかった。とある書評サイトで著者が、心理や倫理を浮き彫りにするために純度の高い世界をあえて設定してみる、と語った視点が興味深かった。再読するたびに色々と新鮮な感覚を経験できそう。著者の他の作品を読んでみよう。2018/09/19
さてさて
216
『セックスって、交尾のことだよね。最近は、大人もあんまり交尾はしないみたいだよ。必要もないし…』そんな言葉の世界が物語の前提となるこの作品。そこには、村田沙耶香さんが紡ぎ出す唯一無二の世界が描かれていました。『夫婦でセックスするのが近親相姦と言われる時代が来るとはね』と当たり前に語られることの潔さを感じるこの作品。『私たちの性は進化し続けていて、それにしっくりくるように世界も変わり続ける』と、未来が怖くもなるこの作品。キョーレツ至極な描写の連続に自身の心が激しく揺り動かされるインパクト最大級の作品でした。2025/07/20