出版社内容情報
幕末の土佐藩士谷は,西南戦争で熊本鎮台司令長官として籠城、薩軍の侵攻を食い止めた。反骨のリベラリストの今日性を描く。
嶋岡 晨[シマオカ シン]
1932年生まれ。詩人、作家、フランス文学者。詩集『乾杯』で小熊秀雄賞。
感想・レビュー
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春風
14
『明治の人ーー反骨・谷干城』の文庫化書籍。『軍人としてのみ広く人びとに定着した谷干城像を、その後、反政府の姿勢を確立し、日露戦争のさいは、非戦論者として見事な反骨ぶりを示した干城像によって訂正する、という一つの試みに過ぎない』という著者の言の通り、西南戦争後の硬骨の慷慨家としての谷干城が詳述される。本著では、修行日記残缺が多く引用され、若年の江戸遊学が干城に齎した人格が描かれている。付録として収録される、干城詩文抄およびその解題が、人間の核に詩情を秘めた詩人・谷干城の人間味を表していて興味深い。2020/03/29