内容説明
土屋伍一、鈴木桂介、林葉三、多和利一…。エノケン、ロッパの浅草黄金時代、そこに生きたボードヴィリアンなど、さまざまな芸人たちのデスペレートな生活とその終焉を、小学校をさぼって神楽坂から徒歩で浅草へと通いつめた著者が、深い愛惜をこめて描いた最高傑作。シミキンこと清水金一を描いた「浅草葬送譜」併載。
著者等紹介
色川武大[イロカワタケヒロ]
1929年、東京生まれ。『怪しい来客簿』で泉鏡花賞、『離婚』で直木賞、『狂人日記』で讀賣文学賞を受賞。別名に阿佐田智也。1989年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おおた
15
浅草の芸人、戦時戦後のエノケンが中心の時代の狂騒曲。アルコールやヒロポンで景気をつけ、金はあるだけ使って、ふぬけた芝居をするが、みんな元気で捨て鉢だ。こういうアンダーグラウンドなエンターテインメントは、今だとYoutuber、Vtuberになるんだろうけど、何かが受け継がれているわけではない。ただ、全うに生きられない人たちの騒がしさが虚しく心に響く。終わった祭りはもの悲しい。2020/08/29
駄目男
13
その昔、『スチャラカ社員』という番組があったが、それとはまったく無関係な話で、色川武大がまだ中学生ぐらいの頃の戦前、戦中、戦後の浅草を中心に活動した、ボードビリアンや軽演劇などの売れない役者などを哀歓をもって描いた作品だ。私の知らない名を残せなかった人たちが、金なし職なし飯なし、女ありのしがない人生で、あまり健康面のことなで考えず、いつ死んでも本望だと、破らかぶれでその場限りの浮世を渡り歩いたようでもの悲しい。エノケン、エンタツアチャコ、古川ロッパ、益田喜頓、水の江滝子、柳家金語楼、山茶花究、2023/12/25
ハチアカデミー
11
「奇形の巷」浅草賛歌。エノケン、ロッパは脇役で、主役は土屋伍一という無名のボードビリアン。酒におぼれ女におぼれ、戦後にはヒロポンにすらおぼれた憎めない人物の浅草奮闘記である。いや、奮闘はしてないか。ただただ、浅草という町に生きた男の物語だ。小学生のころから、観客として浅草に足繁く通った著者の筆からは、当時の浅草の雰囲気が良く伝わる。どうつもこいつもしっちゃかめっちゃかなのだ。併録された「浅草葬送譜」ではシミキンを取り上げ、巻末の井上ひさしの解説では、それぞれの浅草観が披瀝される。かつての浅草を知る必読書。2014/08/10
ウッシー
0
昔の浅草のことを知る貴重な本でした。2019/08/16