内容説明
兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、選考委員を驚愕させた、恐るべき一七歳による第四〇回文藝賞受賞作。
著者等紹介
羽田圭介[ハダケイスケ]
1985年、東京都生まれ。2003年、『黒冷水』で第40回文藝賞を17歳で受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かぷち
77
一言で表せばくだらない兄弟喧嘩の話だけど、羽田さんの手にかかれば立派なドラマになる。こそばゆくなるくらい痛いところを突いてくる、思春期特有の剥き出しの悪意。相手の言葉尻や行動がとにかく気に入らない、骨肉相食む、血が近いだけに憎悪も増す。読んでて(再読だが)鳥肌が止まらない、黒い感情の嵐雨あられ。単なるエンタメじゃなくて文学に落とし込む才能の一端がデビュー作にして既に伺える。青春の話ってキラキラした物より、こういう毒がある方が真実味があって好き。2024/04/13
yumimiy
74
黒く冷えた水?アイスコーヒー・麦茶・烏龍茶、間違って飲んだ麺つゆか?という話ではない。仁義なき兄弟戦争って感じ。争う相手もなくボーっと生きてきた自分には興味津々。思ったのは二人兄弟よか、頑張って三人いや、いっそ十人とか、協力なしでは生きていけない状況なら殺意を抱く暇もないだろう。また、兄弟は他人の始まりという以前に身内の殺人事件が多いのは異常だ。どこかの北の方もお兄ちゃんを暗殺しちゃうんだから異常。さて、羽田氏これが17歳デビュー、乙一氏と同じなんですね。誠に言いにくいのですが乙一氏の感性の方が好きです。2021/04/14
オーウェン
63
羽田さんの初読みはこのデビュー作から。 デビュー時が17歳という若さであり、この兄弟の諍いを描いたドラマというのは自身の体験なのだろうか。 兄の正気と弟の修作のやり取りが主であり、修作の正気の部屋を漁るという習性。 それに対し正気は怒りを覚え報復するが、段々と狂気をはらんでいく展開。 危ういのレベルがのし上がっていくのが手に取るようにわかるし、エスカレートしていく様にどういう決着をつけるのか。 ラストは多分羽田さんなりのブラックユーモアなのだろう。 個人的にはあれは無くてもいいかなと思ったけどね。2021/08/12
★グラスハート★
62
2.5 17歳で文藝賞を受賞し、デビュー作。 弟が兄の机をあさり、兄は弟にトラップをしかけたり反撃する兄弟喧嘩なんだけど、表ざってはやり合わないがエスカレートしていく兄弟喧嘩。衝撃の弟の崩壊!と思ったら…まさかの衝撃的なラスト。 個人的には後半はリアリティが薄くなってきたので、あまり好きではないけど、17歳でこの作品を書くとはセンスの塊。 2021/09/26
アッシュ姉
58
羽田さん二冊目。陰気で粘着質なところがどうにも苦手で合わないようです。表面を追うのが精一杯で、作品の真の姿を捉えることができませんでした。2016/11/28