内容説明
少年時代から自分を天才と信じた島田清次郎が、弱冠20歳で世に問うた長編小説『地上』は記録破りの売行きを示し、彼は天才作家ともてはやされ、いちやく文壇の流行児となった。しかし、身を処する道を誤まり、またたく間に人気を失い、没落した。本書は、島田清次郎の狂気にも似た足跡を克明にたどり、没落のよってきたるところを究めようとした、直木賞受賞の傑作伝記小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Akihiro Nishio
21
大正時代、自称天才作家が若くして世間から持ち上げられ、やがて飽きられ捨てられた現実の話。もちろん天才などではなく、現代では若く中途半端な才能を消費するというのは珍しくもないのだが、当時ははじめてのことだったのだろう。問題の狂気だが、早発性痴呆(統合失調症)とされているが、本書を読む限り躁鬱病に見える。ただ、子供の時からの自惚れと尊大な態度は性格的なものであろうし、ずっと躁鬱病が続いていたと考えるのは不自然。性格をベースに、それが引き起こしトラブルが精神病状態を引き起こしたというのではどうか?2016/04/29
香菜子(かなこ・Kanako)
20
天才と狂人の間―島田清次郎の生涯。杉森 久英先生の著書。自分の才能を信じて自分が天才であると信じていた島田清次郎先生。周囲から天才だ秀才だと言われることを経験した人は多いと思うけれど自分自身が天才であることを信じて疑わない人はあまり多くなさそう。天才と狂人はきっと紙一重。天才でも生まれた時代が悪かったり周囲の理解がなければ簡単に狂人扱いされてしまう。狂人でもささいなきっかけで天才扱いされることもある。天才も狂人も天才と狂人の間でさまよう存在。凡人として生まれて凡人として生きるのが幸せなのかな。 2022/08/17
ふみえ
6
角川文庫版を読了。少し読みづらかったけれど興味深い内容だった。ここまで規格外の人は現代では生きられないと言うか、早くから治療対象となって行動出来ないだろうな。また、当時の出版物の売れ方が凄い。小説家を目指したくもなるな。蘆原将軍の侍従だったなんて驚き。2015/03/05
loanmeadime
5
川口則弘著の直木賞物語で小説なのか実話なのか、という選考時の論争に興味を惹かれて読みました。例えば、豊子という最初の妻に相当する人物は実在するのか、砂木良枝を事件後30年経って訪ねる男性は作者なのか、など、色々疑問が残ります。 直木賞物語によれば、石原慎太郎の「太陽の季節」が20万部、五木寛之の「蒼ざめた馬を見よ」が6年間で20万部だそうで、大正時代前半の30万部というのは、驚異的な数字だったのでしょう。元々、素質のある島清がおかしくなっても不思議はないのかもしれません。2018/01/25
僕素朴
4
何がきっかけで読もうと思ったのだろう。2年前に島田清次郎の伝記が出ているから、そのときに知ったのか。出版社がキャンペーンを打って新人を売り出すシステムの第一号だったというところに興味を持ったのか。この時代の日本人の破天荒な伝記小説は好きなほうだけれど、これは主人公がひどすぎて、胸糞悪くなるばかりだったなあ。金沢出身の母が表紙を見て「『地上』の人ね。金沢で映画のロケしてたわ」と即答したのにちょっと驚いた。2015/09/09
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- 和書
- 空を駆ける 集英社文庫




