内容説明
瀬川は11年以上在籍した奨励会時代の棋譜を捨てた。将棋雑誌も書籍もすべて処分した。そんなものを残しておいても、100%プロになることはできないからだ。将棋の駒すら見たくないと思った。しかし、10年後の誕生日を、彼は四段のプロ棋士として迎えることになる。もちろん、このときの瀬川は、そんなことは想像もしていなかっただろう。奇跡の真相に迫る鮮烈なノンフィクション。
目次
挫折
始動
嘆願
思惑
説得
採決
挑戦
試練
結実
奇跡
著者等紹介
古田靖[フルタヤスシ]
1969年生まれ。愛知県出身。名古屋大学工学部中退。雑誌、ムックなどに時事問題、スポーツ、ビジネス記事など幅広く執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そり
8
プロ棋士になるには奨励会という場所で26歳までに三段リーグを突破しなければならない。それ以外の方法はない。ところが平成17年7月18日、61年ぶりにプロ編入試験が行われることになった。▼私はこの騒動を知らなかったから、瀬川晶司さんがプロに勝つ実績を持っているので認められたのかなと思ってた。実際、将棋連盟とは様々な問題を抱えている閉鎖的な組織で、そう簡単に特例を認めるはずはなかったのだ。この本は、衰退しつつある一つの組織を変えようと奮闘する棋士、記者、アマチュアそれぞれの立場の人間を追ったドラマである。2013/06/28
の
3
衰退する組織の活性化しようという活動に取り組みにも、三段リーグの矛盾にも取り組む改革本。行方さんは出てくるといつでも酔っ払っている。野月さんや高野さんなど、普及に熱心な息子の大好きな棋士の方はやはりこの一件に大きく関わっているようで、まるでコンサルタントのよう。2015/12/30
けいちゃっぷ
3
ドキュメンタリー風で、瀬川フィーバー(フィーバーって死語?)の様子や本人の悩み苦しみ、プロになれた喜びがよくわかります。 が、もっと根源的な「なぜプロ棋士になれたのか」が書かれてなく、淡々と経過が書かれていることが不満ですね。 2006/06/29
ころにゃん
2
プロの棋士になるには奨励会で規定の年齢までに昇段しなければならない。奨励会を辞めてから強くなった瀬川晶司は、どうしてプロ棋士になれたのか。その舞台裏に迫るノンフィクション。瀬川氏の将棋の強さと人柄が、たくさんの人を動かした。プロ、アマ、マスコミ・スポンサーとしての新聞社との人間関係、既得権保持、将棋界での政治力、駆け引きが続く。女流棋士との対決には将棋連盟の冷徹さも感じた。結果はわかっているのに、どんどん引き込まれた。 2012/06/03
ショートブレッド
1
プロ昇段試験を興行にしてもらっていいと言った瀬川さんの覚悟と将棋界を大切に思う気持ちはわかるけれど、それに巻き込まれた奨励会三段と女流プロの扱いはやはり受け入れ難い。 人間的に魅力的な棋士もこういう残酷で冷酷な世界で生きて、そしてその世界を良くはしようとしつつも永続させようとしているのだから、ほんと伏魔殿とそこに集う魔物以外の何物でもない。 しょったんつながりで読んだけれど、この本が良くも悪くも一番将棋界を貫く精神を表していると思う。2018/10/22