出版社内容情報
オブジェクト指向存在論をかかげてこれまでの哲学の根底をゆるがすハーマンがその思想の核心を凝縮させたマニフェスト的著作。
内容説明
対象(オブジェクト)は非関係によって知られ、共生は非相互的、非対称的である―アクター‐ネットワーク論や新たな唯物論との対決を通して、オブジェクト指向存在論の核心を「非唯物論」としてあきらかにし、オブジェクトとしての東インド会社の考察によってその社会・歴史への応用をしめしたハーマン自身によるハーマン入門。
目次
第1部(オブジェクトとアクター;掘り重ねという危険;唯物論と非唯物論;ANTを発展させる試み;モノ自体)
第2部 オランダ東インド会社(VOC(東インド会社)の紹介
共生について
総督クーン
バタヴィア、スパイス諸島、マラッカ
アジア内部のVOC
ANT再論
創生、成熟、衰微、終焉
OOOの方法をめぐる一五の暫定的なルール)
著者等紹介
上野俊哉[ウエノトシヤ]
1962年生まれ。和光大学表現学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
19
もとはどこで紹介されていたものだったか、しかし、「オブジェクト指向存在論」も「アクターネットワークセオリー」もここで初めて触れた身にとってはかなり難物。モノと心との関係、ガブリエルの新実存主義と同じ課題意識のようにも思えるし、全く的外れかもしれない。◇解説、上野が石牟礼道子を上げてつなげてくれたところをヒントに追いかけてみる。でもオランダ東インド会社の例示が多義的でムリだ。まだちょくちょく出てくる「アテローム性動脈硬化症」のほうがマシな気がする。保留。2020/06/28
まあい
2
150ページ程度の本文と、40ページ程度の訳者解説という構成の小著。ハーマンの文体はシンプルなので読みやすい。ただ自分に思想史的な予備知識がないせいで、どこにオリジナリティがあるのか、いまひとつ汲み取れなった。すくなくとも『四方対象』を先に読む方がよいと思う。2019/04/28
ささみ
1
ハーマン、多分存在とか相互性について、人間がなんとなく道理を感じて培いはじめて続いている現象をデジタルやインターネットに関わる製品で語るのは簡単だろうに、あくまで人文科学で語られるワードで説明していることが、哲学をはじめとした人文科学に対して誠実さがある。2020/02/05
シンゼン
0
オブジェクト指向存在論はアクターネットワーク論に対する批判である。アクターネットワークが取り逃がす、対象のそうありえたこと、可能的存在を救い出し、対象の関係の無差別性(対称性)から非対称的な関係、一方的な影響の理論を取り出す。 キーとして共生をあげているが、例え微生物の発展において違う微生物が共にあって全体と化すような変化が起きる。対象と対象の共生から新たな対象が生まれる。この大きい対象は非物体的でも良い。この非物体的対象は魅力的だが生誕の日を決められないのでは?空論に実体的対象を足した理論の印象。2024/05/04
yu-onore
0
オブジェクト間の関係のうち、その存在論的な性質を変容させるようなものとして共生を受け取って、行為の結果としての関係のみにものを上方解体するANTをアップデートする、みたいな理解をした。関係の紐帯が強くなりすぎてオブジェクトが自壊するという、。オブジェクトの共生のリテラルな解釈の結果として陳腐な後期抽象表現主義をとらえるのおもしろい。2021/06/23