出版社内容情報
ドゥルーズが美術を論じた唯一の書が新訳で復活。器官なき身体の画家としてのベーコンを論じながら、新たな哲学をつくりあげる名著。
【著者紹介】
1925年パリ生まれの哲学者。1995年、自ら死を選ぶ。スピノザやニーチェの研究を通じ西欧哲学の伝統を継承しつつその批判者となる。主著ーF・ガタリと共著『アンチ・オイディプス』『千のプラトー』『哲学とは何か』他。
内容説明
「ベーコンはいつも器官なき身体を、身体の強度的現実を描いてきた」「器官なき身体」の画家ベーコンの“図像”に迫りながら「ダイアグラム」と「力」においてドゥルーズの核心を開示する名著。ドゥルーズ唯一の絵画論にして最も重要な芸術論、新訳。
目次
円、舞台
古典絵画と具象との関係についての注釈
闘技
身体、肉そして精神、動物になること
要約的注釈:ベーコンのそれぞれの時期と様相
絵画と感覚
ヒステリー
力を描くこと
カップルと三枚組みの絵
注釈:三枚組みの絵とは何か
絵画、描く前…
図表
アナロジー
それぞれの画家が自分なりの方法で絵画史を要約する
ベーコンの横断
色彩についての注釈
目と手
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
78
ドゥルーズによるフランシス・ベーコン論の新訳。いとうせいこう奥泉光の対談本「小説の聖典」から手に取る。対談本にあった、芸術とはなにかを確認。パウル・クレー曰く「みえるものを描写するのではなく、みえるようにすること」、感じられないものを感じられるようにするのが芸術であると。そのそれぞれの試み、セザンヌ、ゴッホ、そしてベーコンと。紋切り型を脱する彼らを論じるには必然的に難解になってしまう。だが非常に刺激的な本でぜひ購入を考えたいと思った。2017/10/12
やいっち
19
読了。ほとんど理解できなかった。粗暴、狂暴、炸裂する心身。それでいて、にじみ出る詩情。この詩情が醸し出されているがゆえに、野蛮なまでの絵の未熟さ(技術の未熟ではなく、生半可な成熟を拒み続ける、その強靭さに注目している)にもかかわらず、つい見入ってしまう2018/05/26
wadaya
5
ベーコン論ではない。芸術とは何かという問いに「輪郭」を示した本である。僕は今、頭の中の思考を一度捨て去るところからこの文章を書いている。本当はデジタルコードに変換せず、手が自分の意思で動くままに書きたかった。本質を超噛み砕いて書く。細部にこだわると見誤る。芸術は脳の仕事ではないんですよ、と言っている(笑)我々は芸術作品を観て言葉を失う。それがどういうことなのかを言い表した哲学である。僕の言葉で表現すれば、作品に意味など無い。ただ「受容体があるだけ」である。「器官なき身体」を貫いている。歴史的名著だと思う。2017/11/19
🍕
4
イノケンティウス十世の叫びをカオティック・ハードコアのように論じていた2021/02/21
kana0202
2
消化し切れてはいないが、これはすごいことを言っているはず。具象や物語というのはあくまで作られたものであって、それらはありのままではない。神経に直接作用させたいというベーコンの言葉。これが理性でなく、感覚(知覚とどう区別するかが重要なところだ)の領域の出来事だということは確実だろう。そこで重要なのが図像figure。これは人のことではないし、形のことでもないはず。終盤で「図像的な〈イメージ〉」という言葉が出てくるが、図像というのがイメージという漠とした言葉でしか表せないものなのだろう。神経に訴えかけてくる2022/02/10