出版社内容情報
一流浮世絵師が挿絵を担当し、物語を視覚化する独自の魅力を放って庶民を夢中にさせた娯楽小説本の世界をビジュアルたっぷりに紹介。
内容説明
読本、黄表紙、合巻、人情本―江戸の大衆を熱狂させた、娯楽の最先端を追体験!見て愉しい!読んでなるほど!江戸絵入り版本のワンダーランド。
目次
第1章 読本『椿説弓張月』をひもとく(『椿説弓張月』)
第2章 終わらない読本『南総里見八犬伝』(『南総里見八犬伝』)
第3章 文と挿絵を楽しむ読本傑作選(『英草紙』;『本朝水滸伝』;『雨月物語』 ほか)
第4章 合巻はコマ割りのないマンガなのか(『偐紫田舎源氏』;『鬼児島名誉仇討』;『朧月猫草紙』)
第5章 江戸時代の絵入り小説変遷史(『金々先生栄花夢』黄表紙;『文武二道万石通』黄表紙;『鸚武返文武二道』黄表紙 ほか)
著者等紹介
深光富士男[フカミツフジオ]
1956年、山口県生まれ、島根県出雲市育ち。日本文化歴史研究家。光文社雑誌記者などを経て、1984年に編集制作会社プランナッツを設立。現在は歴史や文化に主軸をおいたノンフィクション系図書の著者として、取材・執筆を行っている。著書に『はじめての浮世絵(全3巻)』(第19回学校図書館出版賞受賞 河出書房新社)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
113
「漫画ばかり読んでないで本を読みなさい」と親に言われた人は多いだろうが、江戸時代の大衆に読まれた読本、黄表紙、合巻、人情本などは漫画に等しい多彩なイラスト満載だったとは。こうした挿絵あればこそ世に歓迎されて幾つもの大長編が生まれ、今日に至る出版文化の基礎が築かれたのだ。野田昌宏氏の名言「SFは絵だねェ」とは、江戸以来のエンタメ本の伝統を受け継いだ精神なのだ。かつて岩波文庫版『八犬伝』を第1巻の途中で挫折したが、本書収載の挿絵入りなら読めたかも。出版社も本が売れないと嘆く前に、絵入り本復活をめざすべきでは。2022/04/02
がらくたどん
60
江戸の貸本屋さんの話を読んでいて本棚から見つけたお江戸のエンタメ本のガイドブック。序章でざっと江戸エンタメ本ジャンル(読本・黄表紙・合巻・人情本)とその推移を解説してくれた後は怒涛の実例偏。黄表紙・合巻を草双紙として纏めた説明の章立ての意味がやや分かりにくいが序から読めば自分のような初心者でもよくわかる構成。絵入り本は戯作者も当然挿絵を意識する。馬琴の下絵は仕草まで書き込む漫画風。田舎源氏で一世風靡した種彦は絵コンテ風で絵師に指示する朱文字がやたら多い。草双紙は絵の隙間に文字が入るスタイルと初めて知った。2023/03/17
更紗蝦
25
江戸時代中期以降のエンタメ小説(読本、黄表紙、合巻、人情本)を、インパクトの強い挿絵を元にして紹介している本です。図版が大きいので「見て楽しめる」のはもちろんのこと、解説も分かりやすく、読み応えがあります。今で言う絵コンテにあたるようなものも掲載されているのには驚きました。(40~41p、90~91p) 下絵の段階でかなり細かい指示を出しており、しかもかなり絵が上手く、曲亭馬琴と柳亭種彦は、なれるのもなら絵師にもなりたかったのでは…?と思いました。2022/03/14
じじちょん
6
当時の主な娯楽本を載せている。今でいう心の中の天使と悪魔を『善』と『悪』と擬人化している小説が面白かった。そういう発想って昔からあったんだな。挿絵がダイナミックに描かれていて、所狭しと文字が描かれていて雑多な構成だけど、見入ってしまう。『釈迦御一代記図会』86歳の北斎の挿絵が素晴らしかった。2022/04/14
kaz
4
戯作者の下絵との対比が面白い。レベルが全然違うとは言え、戯作者の下絵もなかなかのものだったりする。図書館の内容紹介は『江戸時代中期から刊行された大衆小説の大半は、「絵入り小説」だった。葛飾北斎ら一流浮世絵師が挿絵を担当し、物語を視覚化する独自の魅力で庶民を夢中にさせた娯楽小説本の世界を、ビジュアルたっぷりに紹介する』。 2022/07/20