内容説明
ローマ帝国史上もっともアナーキーな皇帝ヘリオガバルス。彼の愛した男アエギヌス。宮廷に張り巡らされた陰謀によって皇位を追われ、破滅へとむかうふたりの逃避行の行方は…。長く行方不明だった「幻の原稿」が80年ぶりに発見。『花のノートルダム』で文学を永遠に変えてしまった男が、同時期に獄中で書いたもう一つの代表作。最新の研究成果を踏まえ、本邦初訳として蘇る。21世紀の文学史的事件!
著者等紹介
ジュネ,ジャン[ジュネ,ジャン] [Genet,Jean]
1910‐1986。生後まもなく孤児となり、フランスの地方で里親に育てられた。十代から、少年院、軍隊、そして度重なる窃盗により何度も監獄に入り、それらの体験と同性愛を描く詩、小説、戯曲の執筆を獄中で始めた。ジャン・コクトーに認められて作品を発表するようになり、サルトルの『聖ジュネ』による評価で声望を高めた。刑を恩赦されてからは、しだいに黒人解放運動やパレスチナの抵抗に深く関与するようになり、それらを主題にした長編『恋する虜』が最後の作品となった
宇野邦一[ウノクニイチ]
1948年生まれ。立教大学名誉教授。専門は、フランス文学・思想、映像身体論
鈴木創士[スズキソウシ]
1954年生まれ。作家、フランス文学者、ミュージシャン(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nightowl
1
奔放なまでに社会秩序を崩壊させた少年皇帝ヘリオガバルス。彼は祖母の陰謀の犠牲になろうとしていた。愛する御者、アエギヌスとの日々の果てに待っていたのは?アエギヌスとの際どい遣り取り、悲劇へと向かう台詞の鋭き美しさなど長所もある。一方序盤の祖母の台詞が長い。関係性の説明にページをかなり割いている。上演されたとしてもこれでは客席が眠りこけそう。文芸作品として読むならまだしも...埋もれていたのも仕方無い!?祖母との愛憎については三島由紀夫との共通点を感じる。2025/08/01
RedDirtMarijuana
0
アルトーみたいなのを期待すると拍子抜け。『ヘリオガバルス』というより『さよならヘリオガバルス 最後の一日』。鈴木創士が解説で『サド侯爵夫人』との比較を示唆しているからか、「反響」と密告者を活かせば本人要らずではと思った。彼の死も暗示されるだけだし。鈴木が言うのとは逆に、三島の戯曲と同じく「あくまで通常の秩序に復帰していくかのよう」に感じるし、女性陣だけで回すのに振り切ったほうが面白そう。2025/08/10
☔(sub2)
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952(9類+5仏文+2戯曲)図書館本、河出書房新社2025年5月30日発行。〈流〉〇、あとがきと解説だけ目を通した。ジャン・ジュネがアントナン・アルトーのヘリオガバルスに対して翻案のような形で出したという背景があるのか。返却期限までに読めなかったので本を読む時間がないので、また時機を見て手に取りたく思う。2025/07/02