出版社内容情報
19世紀末、孤児のお針子の少女が、仕事を通して各家庭の秘密を共有したり難題を乗り越え成長していく。イタリアでベストセラー。
内容説明
19世紀末、階級社会のイタリア。お屋敷に通って針仕事を請け負うなかで知った、上流家庭の驚くべき秘密とは―ミシンひとつで自由に力強く人生を切り開いた小さなお針子の波瀾万丈の物語。
著者等紹介
ピッツォルノ,ビアンカ[ピッツォルノ,ビアンカ] [Pitzorno,Bianca]
1942年サルデーニャ島サッサリ生まれ。イタリアにおける児童文学の第一人者。国営放送RAIで文化番組に携わった経歴があり、戯曲、テレビ脚本も執筆した
中山エツコ[ナカヤマエツコ]
1957年東京生まれ。東京外国語大学卒業。東京大学大学院修士課程修了。ヴェネツィア大学文学部卒業。ヴェネツィア在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
110
「あれから五十年が経った」…半世紀に及ぶ時を経て、お針子として生きた半生を顧みた「私」。その追想にしみじみと心を寄せて読んだ。19世紀末のイタリア、厳然とした階級社会にあって、住まいも仕事も結婚も、自由に選び取ることはできない。祖母と二人、針仕事を続けながら見聞きした人生の機微、他者に依存せず自立することを望んだ強靱な心。運も不運も時の流れに溶けて、今もなお彼女を輝かせているのは、技術を磨いて生きてきたことへの矜持だ。女たちの手仕事は、そのしなやかで揺るぎない生を支えてきた心の拠り所でもあったのだろう。2022/02/10
jam
101
19世紀イタリア。流行り病で両親を喪い、祖母から仕込まれた裁縫を自立の糧とし生き抜く少女。女たちへの抑圧や不条理が、自らの裡にある憤りと共鳴するのに時間はかからなかった。しかし、一針を進めながらも文字を学び、世界が拓けていく感覚が自由への端緒であることに思い至り、それも昇華した。生まれたばかりの赤ちゃんを包む布のこと、独創的なドレス生地が生んだ仇など、興味深い噺も楽しめた。そして、彼女がミシンを手にした経緯も、それが人生に果たした役割も。ミシンが見たのは平凡でも誇り高い女の一生。過ぎ去ればすべて夢の後先。2021/12/08
chimako
85
お針子という仕事。既製服が一般的ではなかった時代はなくてはならない職業だったに違いない。裕福な家では下着からドレス、カーテンやベッドカバーに至るまでお針子を雇い仕立てるのが普通のこと。お針子は黙って一針一針縫っていく。コレラで父母が死にたった一人の身内の祖母も亡くなり一人で暮らす少女。祖母に教えられお針子として生計を立てる。仕事を頼む者と仕事をもらう者との間には歴然とした身分の差がある。下層の女性は主人の性の捌け口として雇われることもある。そんな時代にミシンを操り夢を見た女性の半生。ミシンは何を見たか。2022/11/28
ゆきち
80
すてきな装丁で、内容も興味深くとても濃厚な読書時間でした。作者はイタリアの児童文学の第一人者とのこと。19世紀末から20世紀初頭が舞台。主人公は疫病で家族を失い、お針子の祖母に育てられて、貧しいなかでも誇りをもち、真面目に仕事に取り組むお針子さん。素晴らしい裁縫の技術を持っていても階級で裁縫士ではなくお針子と呼ばれ、女性は特に軽んじてみられる時代。その中で少女から女性へと成長していく姿や、周りで起こる女性への悲しい出来事、主人公の恋がとても印象的で、ハラハラドキドキの場面もあり、とてもすてきな一冊でした。2021/08/08
ネギっ子gen
77
【世にも素晴らしいもの――ミシン】19世紀末、階級社会のイタリア。疫病の流行で家族を失って祖母の二人っきりになった時、私は5歳で祖母は52歳。やがて、屋敷に通って針仕事を請け負うことに――。お針子として、一人の女性として成長していく姿が描かれる。<祖母はミシンを使うことができた。祖母がリズムを刻んでペダルを上下させると針の下でするすると布が素早く進んでいくのを、私は驚きの目で眺めるのだった。「家にも一台あったらねえ」祖母はため息交じりに言うのだった。「どれだけたくさんの仕事を引き受けられることか!」>。⇒2023/12/23