出版社内容情報
新型コロナ;感染;武漢;肺炎;都市封鎖;ロックダウン
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
83
武漢が封鎖されている間、作家・方方によって書き綴られた日記。ネットで何度も削除されたり、体制寄りの「極左」からの非難に晒されても書き続けた。内容は日々の生活を綴ったり、見聞きしたことを書いていただけなのに。医療従事者への感謝にあふれていたり、国を信頼していることを書いていたのに。後半になるに従い、封鎖による不安と、心無い者たちへの苛立ちからか、体制や管理者への批判が多くなってくる。それでも、自分の信ずることを伝えようとする。「ある国の文明度を測る基準は、弱者に対して国がどういう態度を取るかだ。」2020/10/14
J D
64
コロナが近々5類になろうかという時期に読んで見た。傍から見ていた武漢とここに記されている生身の武漢の違いに圧倒された。すでにかなりの変異を遂げたコロナウィルスだが、武漢での最初のウィルスは相当強かったのか、無防備だったのか。正しい情報の大切さが身にしみた。「小説とは、落伍者、孤独者、寂しがり屋に、いつも寄り添うものだ」という言葉が心に染みた!武漢という都市を知れたこと、武漢での出来事を知れたことは収穫だった。おすすめです。2023/03/11
sayan
60
本書を知ったのは緊急事態宣言中の4月後半だった。当時国内で賞賛されていた武漢日記が一転、批判の対象へ。海外での翻訳出版が原因と指摘があった。内容は多くの人が感じたコロナに対する恐怖と日々の不安を著者らしい歯に衣着せぬ表現で記述したもの。それは場所は変われど世界中の人々が多かれ少なかれ抱いた感情が言語化され、時に「よく言ってくれた」との気分になる。このダイナミクスは日記だから味わえる醍醐味。短くない封鎖期間中の感情の波は、悪い方へと行きがちだが、各日記の最後は前向きな言葉で終える著者の姿勢に勇気づけられる。2020/12/29
niisun
38
新型コロナを5類にしようかという話も出てきており、そろそろ読んでみるかと手に取りました。後から思い出して書くのではなく、その時の心情とともに記録されており、瞬間を切り取るという意味で本当に貴重な日記ですね。この本を読んで『東京焼盡』という東京大空襲前後の内田百閒氏の日記のことを思い出しました。ほぼ酒と食い物の話でしたが、誇張も脚色もなく、只々日々の記録に終始しているところに価値があるように思います。方方氏の『武漢日記』はもう少し主義主張が強いですが、やはり何十年後かにはさらに価値あるものになるのでしょう。2023/02/27
yyrn
33
当初「ヒト・ヒト感染はない」と言われながら新型コロナウイルスが武漢市内に蔓延し、病院は患者であふれ、結局1千万人都市の完全封鎖という荒療治に対して、長年武漢で暮らす作者は自宅に閉じ込められた60日間、周辺の人々の様々な困難や心情をブログで発信しつつ、医療従事者や友人知人ら、ボランティアへの感謝の言葉以上に、湖北省担当部局への批判を繰り返す。ただ、都市封鎖も中国だから成功したと政府に信頼を寄せる記述も出てくるためか「ブログ削除」程度の干渉で済んでいたが、日々亡くなる人々を前に体制批判はエスカレートしていく。2020/10/23