内容説明
半世紀近くの研究と講義の成果を盛り込んで、ダンテとその作品の魅力を平明かつ詳細に解き明かす画期的名著。『神曲』の名訳者が導く、地獄・煉獄・天国をめぐる旅。
目次
ダンテの『新生』
仏教の地獄とキリスト教の地獄
作品の冒頭
地獄の門
三途の川、辺獄
肉欲の罪
大食らいの罪、貪欲と浪費の罪
忿怒の罪、地獄の下層界へ
異端の罪、暴力の罪
自殺者の森、熱砂の沙漠〔ほか〕
著者等紹介
平川祐弘[ヒラカワスケヒロ]
1931年、東京生まれ。東京大学名誉教授(比較文学比較文化)。『東の橘西のオレンジ』でサントリー学芸賞、『ラフカディオ・ハーン―植民地化・キリスト教化・文明開化』で和辻哲郎文化賞、『アーサー・ウェイリー―『源氏物語』の翻訳者』で日本エッセイスト・クラブ賞、マンゾーニ『いいなづけ』の翻訳で読売文学賞・日本翻訳出版文化賞を受賞。紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
49
『神曲』講義とは言え、古事記、古今和歌集、往生要集、敦盛等日本の古典との類似と差異が語られ、ラテン語ではなくイタリア語で詩を書いたダンテに、漢詩ではなく母語でうたを詠んだ紀貫之を対比し、師ウェルギリウスを白楽天になぞらえ、キリスト教の地獄と仏教地獄のイメージを重ねる等、古今東西の文化の態様を縦横無尽に語る比較文化史的アプローチが異色。無論、詩全体への、詩一行一行への向き合い方は深く素直。地獄篇推しの平川氏は全講義25回のうち地獄篇に19回を当て当然目を背けたくなるような情景も満載。そこでの可笑しみも知る。2025/06/18
メルセ・ひすい
5
14-07 赤09 ★5 これは私講義である。私小説の講義版なのである。(*_*) 社会人向きレクチャー、90分×24回+「まえがき」=25回を整理したもの。。◎ダンテ=基督教詩人の思い上がりは批判(`ε´)。日本人外国研究者は研究対象と一体化して「吾が仏尊し」となってしまい、研究対象をひたすら讃える傾向があるが、先生は「吾が仏尊し」というスタンスも勿論「吾が基督尊し」という日本の一部にあるダンテ崇拝者のような『神曲』 奉り讃歌も唱えるつもりはない!尚、衒学は×、文学はイデオロギーや観念で論じない。2010/10/20
駒子
2
最初の方の章、「ダンテについて」、「キリスト教の地獄と日本の地獄の比較」などの部分は非常に興味深く、じっくり読んでいましたが、神曲の内容について詳しく述べられた部分は丁寧すぎて、飛ばし読み気味に。ただ平川氏の訳がとても分かりやすく読みやすいので、今度平川氏訳の神曲を最初から読んでみようと思いました。2014/04/13
RuiRui
1
冒頭まえがきに引用されている天国篇の内容はついった脊髄反射そのもので笑えるw。昔からそうなんね。。。講義録って事でちょっと脱線ぽい話もありつつ、訳含めて総じて読みやすいと感じた。 『善し悪しをいうにせよ是非を論ずるにせよ 細かい判断もなしに肯定否定を行う者は 愚か者の中でも下の下たる者だ』 『だからはやまった意見はとかく 狂った方向へ曲がりこむ その上、情が知にからむ』(天国篇第13歌115-120、130-135)2021/09/11
kakeruuriko
1
好みがはっきりしているというか好みを表現することに躊躇がなく、分量もほとんど地獄篇に割かれている。天国篇が好まない旨はしつこいほど繰り返される。時々に学生運動や政治やらへの批難が挟まるなど、やりたい放題だがそういう年寄りはそういうものと割りきれば読むのに支障はない。中身も神曲の部分で誤っていることもないんだろう。神曲自体未読なので読むときは平川氏の訳で読もうと思った。2020/03/09
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