内容説明
病気が進行して、やがて父はただの人となった。仕事のない、話すべきこともない、ただの人となった父について、なにひとつ知らないことにぼくが気づいたのは、そのときだった。…ゆたかなアラバマの自然を背景に、父と息子の絆を描いた感動のものがたり。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
九月猫
45
映画が好きすぎて、原作も……と購入したものの積みっぱなしだったのをようやく。原作もじゅうぶんファンタジックではあるのだけど、映画のほうがファンタジー色が強かった。あれはティム・バートンの魔法だなぁ。 死に向かう父の心に寄り添いたい息子。相変わらず笑い話やホラ話で接する父。刻々と近づくその時。原作は息子の視点で描かれているので、父と息子の物語としてはこちらのほうが、より切ない。映画で汲みとりきれなかった父子のお互いへの思いを読むことができてよかった。2017/02/24
ブラックジャケット
9
アメリカ文化の中にあるホラ話。にぎやかなパーティの中で、話し上手な語り手が、クレージーな設定やぶっ飛んだオチで満座を沸かす。しかしこの手の人はあまりに個性が強く、笑いを取ることに至上の意味を与え、他を顧みない。本書の書き手の父エドワード・ブルームが死の床につき、余命わずか。息子のウィリアムは父の人生を顧みて、ホラ話の人生に向き合う。スカスカであるはずのホラ話の中から珠玉の真実が見えてくる。心温まるショートショートを重ねながら、父親の姿が静かに変換していく。とても感動的な結末が、読者の心を癒やしてくれる。 2018/10/14
ぱせり
7
父さんが神話になったのは、父さんひとりの手柄ではない。そこに、父さんと一緒に笑い転げ、物語を心から楽しんできた息子がいたからで、神話を作り上げたのは、父と息子、ふたりなのだ。最後のお話がすばらしい。神話、という言葉はほんとにふさわしいかもしれない。生きる日も死ぬ日も祝うべき日と思う。2019/01/30
あお
6
ティムバートンの映画が凄く好きなので、本書をとったんですが読んで良かったです。父親が息子に話すお伽話のようなホラがとても魅力的です。最後まで読んだ後も父親の話は真実なのか嘘なのかを考えて楽しむことができます。真実なのか?優しい嘘なのか?疑えば疑う程に物語に没頭できる稀有な作品です。2015/01/22
つくし
5
物語のもつ寛大さがじんわりと広がる読後感。映画はお父さんの一生がメイン、最期のまとめかたもとても綺麗で感動的で大好きです。でも、こちらもまた素敵。息子の視点で語られる深い繋がりと優しさがありました。2017/11/02
-
- 和書
- 日本のすまい 〈3〉