内容説明
卓抜な描写力と絶妙な語り口で、17世紀イタリアの風俗、社会、人間を生き生きとよみがえらせ、小説を読む醍醐味を満喫させてくれる大河ロマン。読売文学賞、日本翻訳出版文化賞、ピーコ・デッラ・ミランドラ賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
41
後半は、ルーチアの信仰心とドイツ傭兵が持ちこんだペストが、恋人たちの運命を大きく変えていく。美しく印象的な風景描写が主人公二人の運命を詩情たっぷりに描きだし、個性豊かな登場人物の描写も見事だ。狂言回しのようなアッボンディオ神父は暗くなりがちな話に喜劇的要素を加え、慈愛深いカプチン僧クリストーフォロ神父が悲惨な二人に希望を持たせる灯火となっている。この作品、実は19世紀初頭のオーストリア支配下にあったイタリアを暗に描いたもので、権力者ドン・ロドリーゴはイタリアを踏みにじる他国を象徴しているのだそうだ。2016/01/23
メルコ
9
上巻を読み終えてから約1年経ってから下巻を手に取った。領主の策略により分かれて逃げ隠れることとなるレンツォとルチーアのいいなづけの二人。やがてミラノ一帯にペストが蔓延するようになる。粗筋は目次に書かれており、読者は先品の語り口を愉しむことになる。インノミナートなる悪党の大将が枢機卿との出会いにより改心する場面が見どころ。イタリアではダンテの「神曲」と並んで文学史上の地位を占めているという。弱いところはゲーテの指摘するように”作中の若干の箇所で歴史的資料が生のまま挿入されており、そこでは詩人は詩人たることを2021/12/11
ケニオミ
9
「人には善行を施せ。」「受けた恩は、その人ではなくても、返せ。」などキリスト教精神に満ち溢れたクラシックでした。「長い物には巻かれろ」を唯一の処世訓にしているのではないかと思われる、二人のいいなづけの地元の神父が、この小説のキーパーソンでしたね。ねずみ男は彼のイメージから生まれたのか。はたまた、そんな輩はどの身分にも、どこの国にもいることなのか。少し興味深かったですね。読んでよかった小説です。機会があったら手にしてみて下さい。2018/06/17