感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田氏
19
これはアレゴリーだろうか。そうであってほしいと願う。でなければ何なのだろう。存在と非存在との鏡面をただの透明なガラスにされてしまったようで、事実・現象と虚構・幻想とが混濁する。どこにもない都市はすなわちどこにでも存在することでもあり、語られるべきものは語りえないことによって輪郭を得て、実体へと到達する。マルコ・ポーロとフビライとのやりとりは、われわれの存在を揺さぶり、虚ろへと落とし込む。それはもはや読み手へ吐かれた呪いのようですらある。ただのアレゴリーだと種明かししてもらえたら、どんなに救われるだろうか。2020/12/29