内容説明
未来も勿論なく、あとはただ捨てられるだけのボロ布が、唯一の存在感を主張するに必要な揺れを演出する微風が、「誰か家賃を払ってくれないか?」のいなたいメロディと重なって小さなスピーカーから流れた。ささやかに、煤けたボロ布はたなびいた。それは主張と呼ぶには、あまりにも小さな声。起こっても起きなくても、どちらでも構わないような、何事かが起きたとも言い難い、誰の感性にも認知されない音量の小ささだった。(本書より)。暗黒のマイスターが、病いに倒れる直前まで書き継いだ果てしなき崩壊のための言葉の閃光。
著者等紹介
中原昌也[ナカハラマサヤ]
1970年、東京都生まれ。「暴力温泉芸者」名義で音楽活動の後、「HAIR STYLISTICS」として活動を続ける。2001年『あらゆる場所に花束が…』で三島由紀夫賞、06年『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞、08年『中原昌也 作業日誌 2004→2007』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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練りようかん
17
表紙きっかけの短編集。一編目の「わたしは花を買いに行く」は、同僚にその鼻歌は何の曲かと聞き、返ってきた言葉が素敵でぽんと引き込まれた。ルンルンは自分で作る、奏でるものと思える効果があらわれるのだが、果たして主体主導であるかは未決にしておきたい気持ちになる。編を重ねていくと、説明しようのないある法則にはまった人たちの作品集に思えて、相乗効果と不条理を感じるサイクルという面が強くなっていった。「あの農場には二度と」やダークツーリズムを想起した表題作の、力技でも人間力でもない動いた力は何なのかが頭に残った。2026/04/13
フランソワーズ
13
初読みの小説家。何が言いたいのかわからない。けど、すごく面白い。変拍子、脱線の連続で、伏線回収なんてク○喰らえ。しかも、ウソのようなホントのような蘊蓄が鎮座したり、「さっきあったような?」っていう文章が平然と出てくるし。でもこの小説家さん、詩心あるよ、きっと。他の作品もぜひ読みたい(と思うものの、短編限定)。お気に入りは、『わたしは花を買いにいく』)。2025/10/25
garth
9
「実際には、肉食の蟹は闘いに負けた人間を、頭から丸ごと食してしまうので、死体は残らず、なかなか実態が把握し難いのが現状であるのだが、それでも綿密な調査を求める声は後を絶たない」2025/05/28
おやぶたんぐ
5
「偉大な作家生活には病院生活が必要だ」(ttps://bookmeter.com/reviews/129427363)と共に購入。脈絡のない文章で展開する内容は、唐突にして不可解だがリーダビリティは高い。何だかパターン化している気もするが。2025/08/16
uchiyama
4
めちゃくちゃ面白い。書かれてる内容(も相当怖いんだけれどそれ)以上に、文の流れ、リズムそれ自体が強烈に不穏。なのに(いや、だからこそ)笑ってしまう。失語の瞬間と饒舌への痛烈なアイロニーを孕みつつ、哄笑と自失を招く事態や事物を繰り出していく語り(ショット)に、ぞっとしながら震え、かつ笑えるこの感じ、ブニュエルに近い、と。日本語で書かれた小説の最前線であり、そして、これから先残っていくのは断然これ、とも。叙情やら気取りやら所謂美やらをぶった斬る、その凄絶さに思わず涙しそう。で、どこか愛らしい…。最強です。2025/11/24




