内容説明
共産党に幻滅した若き思想家・渡辺京二と、孤独に表現を模索する若き詩人・石牟礼道子。折しも水俣病が社会問題として再浮上した一九六五年、谷川雁を介したふたりの出会いは、渡辺が編集する地域文化誌「熊本風土記」創刊に結実。社会問題と文学/思想が重なる大きな渦へと転じていく―『苦海浄土』誕生である。文学者としての共鳴、作者と編集者の緊張感、活動家としての共闘などが峻烈に交差する先で、ふたつの魂はどこに向かおうとしていたのか?知られざる証言や資料から『苦海浄土』誕生の裏側を躍動感豊かに描く。
目次
第1章 水俣の浜
第2章 不如意の渦
第3章 日本読書新聞
第4章 コオロギとイモムシ
第5章 風土記水俣事務局
第6章 資金難
第7章 森の家
第8章 休刊
第9章 菜の花の夢
第10章 ぼくの思う革命
第11章 明日へ
著者等紹介
米本浩二[ヨネモトコウジ]
1961年、徳島県生まれ。毎日新聞記者をへて著述業。石牟礼道子資料保存会研究員。著書に『評伝 石牟礼道子―渚に立つひと』(新潮社、2017年、第六九回読売文学賞評論・伝記賞)ほか。福岡市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
41
石牟礼道子のことは『評伝 石牟礼道子』で書いた。石牟礼と渡辺京二のことは『魂の邂逅』で書いた。水俣病のことは『水俣病闘争史』で書いた。まだ書いていないことは何かと米本浩二が考えた時、本丸である『苦海浄土』に行き着くのは当然のことなのだろう。しかし、本書の主役は『苦海浄土』では実はない。米本が述べているように、本書の主役は『熊本風土記』という小雑誌である。そこに『苦海浄土』の元となる「海と空のあいだに」が連載されており、何より『熊本風土記』がきっかけで石牟礼と渡辺の交流が本格的に始まるという、(つづく)2024/06/12
どら猫さとっち
8
公害によって苦しめられた土地、水俣病という現実を生きる人たちの悲しみと怒りを綴って、今も古典的名著として読み継がれる「苦海浄土」。著者の石牟礼道子はどのような想いで書いたのか。そして彼女を支えた渡辺京二の交流を描いた、メイキングオブ「苦海浄土」。読んでいた方は、本書を読むことを薦めたい。苦しみを分かち合いながら、後世に伝えたいという想いが、切実な筆致で描かれている。2024/09/18
tharaud
8
石牟礼道子『苦海浄土』の原型となった「海と空のあいだに」が連載された渡辺京二による雑誌「熊本風土記」。その発刊から休刊まで、そして雑誌を媒介とした石牟礼と渡辺の関係の深化を描くノンフィクション。日記や手紙など、本人から託された貴重な資料をもとに構成する。二人に関して、著者の米本さんのいくつかの著作のおかげで後世に伝えられる事実が多くある。刊行に感謝したい。2024/07/15
勝浩1958
6
石牟礼道子女史が若い頃、何度も自殺未遂を犯していたなんて驚きでした。 渡辺京二氏との絆の深さに凄みが感じられました。2024/10/07
チェアー
5
渡辺京二にとっては石牟礼道子が人間ならざる存在になっていったのかもしれない。いや、どうかな。もっとも人間らしいと思っていたのかもしれない。理屈ではなくて情を通すことがてきる相手。 石牟礼道子と渡辺京二が「いかにしてできたか」を知るための必読書。 2024/07/27
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