内容説明
窓越しの恋の不穏、時を超える名探偵、エリザベスの秘密の冒険…ロンドンを舞台に異端の翻訳家が贈る初小説。
著者等紹介
大野露井[オオノロセイ]
1983年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
83
塔のない街とはロンドンのこと。ちょうど1年前の2月ロンドンを訪れたので、積んでいた本を手に取った。ロンドンには、漱石の倫敦塔もビッグ・ベンもカナダ・タワーもある。しかし、パリにおいてエッフェル塔は街の象徴であり、ロンドンにはそういう意味での塔はないと「塔のある街」にある。著者は翻訳家でロンドンに短期滞在した期間の小説7編の短編を記しているが、あまり楽しめなかったのは、私に英仏の教養が足りないせいかもしれません。地下鉄をチューブというのは、空気で郵便物を送る気送管に形状が似ているからというのは納得しました。2025/02/09
rosetta
36
★★★✭☆気鋭の翻訳家の第一小説集とのこと。冒頭は格調の高い自意識過剰バリバリの文体に、自分が高校生の頃に書いた小説を想起して赤面する思いだったが次第に内容にバラエティができて普通に楽しめるようになった。結構お気に入り。ロンドンにやってきた無職の男が別に何もせずグダグダする話から、向かいの窓の女性に手紙を書く話しやらホームズのパスティシュにタイムスリップを混ぜた物やら、絵本のような話などなど、どれも特に意味があるとは思えない雑多な小説の散らばりに辛辣なユーモアを交えノホホンと浸るような読書体験になった2024/04/22
夏
26
ロンドンを舞台にした、作者の初小説。作者は翻訳家らしいのだが、わたしは作者の翻訳した書籍を読んだことがなく、これが自分にとって初めての作者の本となった。7編の短編集となっており、その内の一つは作者が翻訳したものとなっている。ロンドンを舞台にしたとあって、イギリス英語がよく出てくる。かの有名な切り裂きジャックも題材にしていたり、ロンドンの魅力が溢れる短編集になっていて、ロンドンへの愛がないとこの小説は書けないだろうなと思わされた。★★★☆☆2024/06/16
rinakko
11
隅々まで堪能して、大変満足だ。皮肉でどこか揶揄い気味な語り口も、洒脱な文章もとても心地よかった。作者には異端好みな翻訳家のイメージを持っていたが、以前某所で “今澁澤龍彦” などと称されていたことを思い出し、なるほど…とあらためて頷いたり。お気に入りは「窓通信」や「舌学者、舌望に悶舌す」、「秋の夜長の夢(ド・ポワソン著)」。2024/02/29
冬野
10
初読み作者さん(本業は翻訳家で、これが初の小説作品らしい)。雰囲気も文体も大きく異なる七編の連作(?)短編集。これが現代の日本人の作品なのか、と思うほど数十年前の海外小説の翻訳書めいている。しかし英国の描写や思想は現代的で、違和感が独特な魅力となっている。かの名探偵ぽい人物が出てきたり、童話みたいだったり不穏な話もあったり、かなり変な本(変は百%の褒め言葉です)。活字の大きさを変えずとも丁寧語+多めのルビで児童小説に見えるのが新しい発見だった。円城塔作品や多和田葉子作品がお好きな方に刺さりそう。星:4/52024/06/10
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