内容説明
四国から東京へ。映画音楽の勉強のため、専門学校に通うことになった修文は、引越し先・風月荘704号室にまつわるある噂を聞く。「出るよ、茲」―久世花音…かつて修文と同じく「音楽」という「夢」を追い続け、ある日、自ら命を絶った3代前の住人の幽霊の話を。“かのん”が影を落とす部屋から始まる、切なく美しい、そして謎に満ちた青春の物語。
著者等紹介
津原泰水[ツハラヤスミ]
小説家。1964年広島県生まれ。青山学院大学卒。1989年に少女小説家“津原やすみ”としてデビュー。1997年、“津原泰水”名義の長篇ホラーである『妖都』(早川書房)を発表。2011年の短篇集『11 eleven』が第2回Twitter文学賞国内部門第1位、収録作の「五色の舟」はSFマガジン「2014オールタイム・ベストSF」国内短篇部門第1位、また同作は近藤ようこにより漫画化され、第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞を受賞した。現在は、欧米や中国で作品が紹介されている。2022年10月2日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みかん🍊
92
大学を中退し父の工務店で働いていた修文は映画音楽の勉強したいと上京し音楽の専門学校に通う、紹介された防音ピアノ付きの部屋には幽霊が出るという噂があり、現代を明治の文体で描いた青春小説、幽霊の正体や周りの人々の証言などミステリの要素もあり面白くもあるがやはり明治文体は読みにくく津原さんとはいえエンタメというより文学小説だった。津村さんの遺作でもあり最後の小説、ご冥福をお祈りします。2023/11/13
yumiha
46
ん⁉幽霊が出る部屋?これは苦手なめっちゃ怖いホラー系津原泰水作品か?と身構えながら昼間読書にした。でも読み進めると、どちらかと言えば青春ものだった。夢に近づくために音楽系専門学校で学ぼうと上京した修文が不思議な存在感。若いのに冷静で悟っていて、名誉欲とか出世欲とかじぇんじぇんなくて、むしろ老成したようなタイプで、感覚的に自分の音を地味に追究する。修文の周り人物たちの方が熱い。それぞれの夢を抱いた若者たちが寄り集まってくる東京という大海原が一番の曲者なのかもしれない。2024/03/01
rosetta
38
★★★✮☆津原さんの遺作。現代の青春小説を明治時代の文体で描くと言う試みらしいが多少リーダビリティが良くない位で特に違和感は無い。これが旧仮名遣いとか古い字体とかだったりしたら感じたかも知れないが。高校卒業後父親の会社で働き、自分で貯めた金で新居浜から東京の音楽専門学校に来た秋野修文。学校に紹介された部屋にはグランドピアノがあり、元の住民の女性の幽霊が出る。幽霊の謎を追ったりバンド組んだり女の子と付き合ったり。如何にもありそうな、そしてまた逆に何処かお伽噺めいた物語が、修文の性格も相まって淡々と進む2023/11/18
ぽてち
32
2022年2月に亡くなった津原さんの遺作。という情報だけで借りたので、ページを開いて唖然とした。なんじゃこりゃあ! 文体が硬い。見たこともない漢字が使われている。ぼくの読んだ津原さんの本は『ヒッキーヒッキーシェイク』だけなので、この落差に戸惑った。気を取り直して続きを読む。大学に入学したものの音楽の夢を捨てきれず中退。金を貯めるために父親の工務店で働き、東京の専門学校に入った秋野修文を主人公とした青春小説だ。現代を舞台に明治の文体で書くというのは面白い試みだと思った。旧仮名遣い版もありだな。合掌。2024/02/07
えも
29
昨年度に逝去された津原泰水氏の最後の長編小説。音楽を学ぼうと愛媛から東京に出てきた専門学校生が都会の暮らしに翻弄され、父親が倒れたためまた愛媛に戻る。漱石の三四郎の如く、明治の文体を身にまとった甘酸っぱい青春小説に堪能し、そしてもう津原さんの新作は出ないんだと寂しく思う。2023/12/11