出版社内容情報
宇佐見 りんさんスペシャルインタビュー
内容説明
推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。第164回芥川龍之介賞受賞。
著者等紹介
宇佐見りん[ウサミリン]
1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年、『かか』で第五六回文藝賞を受賞、三島由紀夫賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1394
文体の成熟度、完成度は極めて高い。言葉の紡ぎだす世界の信頼度もまたそうだ。その意味では、タイプは全く違うが、『日蝕』でデビューした頃の平野啓一郎を思わせないでもない。ただ、その一方で、内容的には随所に矛盾を孕んでもいる。そもそも、あかりは「推し」に全てを投影しながらも、それに溺れることはなく、いたって自己内省的でクールに冷めている。また、高校を中退した学力と、分析的な思考との乖離もまた大きい。すなわち、この小説は自分自身の存在意義を投影によって確認しようとしつつ、崩壊の予兆を最初から予見していた⇒2021/06/30
ろくせい@やまもとかねよし
1239
自己を問う物語。古くからの主題。しかし、まさに今でしか紡げない作品。主人公の思考表現は、重々しくないが決して軽いものでもなく、宇佐美さんの筆力に感服。自己形成の軸には他者が不可欠。主人公のそれは「推し」。「推し」への利他性を、切ないまで惜しみない利己で発する。偶像である「推し」は別世界の存在。一方「推し」は近親の人間。理想と割り切る「憧憬」の偶像が、現実の生活に「共生」としてが入り込み、この自己意識での曖昧な距離感が、自己を形成する過程を複雑にするのか。いつの時代も人間は自己を支える利他を求めるだろうか。2021/05/01
いっち
1072
女子高生である主人公の推しメンが、炎上した。推しは男女混合グループに所属する男性。炎上した推しは、記者会見をし、グループ内選挙で最下位になり、熱愛発覚し、グループ解散し、芸能界引退という散々な展開。既視感のある光景。「推しのいない人生は余生だった」と言う主人公は、言い過ぎな気もするが、誰もが経験する通過儀礼のようだと思った。だからこそ、生きる意味である推しを失った主人公が、これからどう生きるのか気になった。推し変するのか、推し活から引退するのか、推しの芸能界復帰に尽力するのか。その後の展開が気になる作品。2021/01/09
菅原孝標女@ナイスありがとうございます
1050
『推しを取り込むことは自分を呼び覚ますことだ。』『推しがいなくなったらあたしは本当に、生きていけなくなる。』印象的なフレーズしかない。丁寧で、詳細で、それでいて荒い。推しを推すことに生きがいを感じている身としては共感も多いし、もっともっと深くまで自分を掘り起こされたような感じもする。作者が同い歳とはまるで思えない。2021/06/04
うっちー
1004
現代の若者らしい作品(おじさんには理解できない面も)。文章力、表現力が凄く、将来楽しみな作家です。2020/11/13