出版社内容情報
宇佐見 りんさんスペシャルインタビュー
内容説明
推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。第164回芥川龍之介賞受賞。
著者等紹介
宇佐見りん[ウサミリン]
1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年、『かか』で第五六回文藝賞を受賞、三島由紀夫賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1959
文体の成熟度、完成度は極めて高い。言葉の紡ぎだす世界の信頼度もまたそうだ。その意味では、タイプは全く違うが、『日蝕』でデビューした頃の平野啓一郎を思わせないでもない。ただ、その一方で、内容的には随所に矛盾を孕んでもいる。そもそも、あかりは「推し」に全てを投影しながらも、それに溺れることはなく、いたって自己内省的でクールに冷めている。また、高校を中退した学力と、分析的な思考との乖離もまた大きい。すなわち、この小説は自分自身の存在意義を投影によって確認しようとしつつ、崩壊の予兆を最初から予見していた⇒2021/06/30
ろくせい@やまもとかねよし
1850
自己を問う物語。古くからの主題。しかし、まさに今でしか紡げない作品。主人公の思考表現は、重々しくないが決して軽いものでもなく、宇佐美さんの筆力に感服。自己形成の軸には他者が不可欠。主人公のそれは「推し」。「推し」への利他性を、切ないまで惜しみない利己で発する。偶像である「推し」は別世界の存在。一方「推し」は近親の人間。理想と割り切る「憧憬」の偶像が、現実の生活に「共生」としてが入り込み、この自己意識での曖昧な距離感が、自己を形成する過程を複雑にするのか。いつの時代も人間は自己を支える利他を求めるだろうか。2021/05/01
ehirano1
1577
文章というか、書かれている「言の葉」がホントに美しい、否、「綺麗」と感じました。加えて、私の「推し」は何だろうか(=少なくともアイドルではないwww)、あるのだろうか、もしあったら本作の少女のように「燃ゆ」ことができるだろうかと思索に耽りました。2023/04/21
海猫
1529
機会あって、久々に芥川賞受賞作を読んでみた。私はアイドル的な存在を猛烈に「推し」たことがなく、主人公の女子高生にまるっきりの共感までは出来ない。が、ストイックで突き刺さるような文体の物語を追っていくうちに、なんとなく理解できる気がしてきた。「推し」を推すことによって世界と繋がろうとする様は、なにか求道的で尊いものに触れているようにも思えてくる。アイドルを推すからどうこうではなく、普遍的なことを語っているように受け止めた。終盤の展開にはある種の痛みすら感じる。分量的に程よく、ドライヴ感があって一気に読めた。2021/04/22
うっちー
1528
現代の若者らしい作品(おじさんには理解できない面も)。文章力、表現力が凄く、将来楽しみな作家です。2020/11/13