出版社内容情報
「いとうせいこうレトロスペクティブ」シリーズ第一弾。街に突如現れた浮浪者は偉大なる預言者か? 壮大なる詐欺師か?
【著者紹介】
1961年生まれ。出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。88年『ノーライフキング』でデビュー。99年『ボタニカル・ライフ』で講談社エッセイ賞受賞。2013年『想像ラジオ』が話題を呼ぶ。
内容説明
街に現れた記憶喪失の浮浪者。彼は偉大なる予言者か?壮大なる詐欺師か?未来を幻視した著者代表長編。
著者等紹介
いとうせいこう[イトウセイコウ]
1961年東京都生まれ。作家、クリエイター。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。作家としては、1988年『ノーライフキング』でデビュー。同作は第2回三島由紀夫賞候補作に。また第二長編となった『ワールズ・エンド・ガーデン』が第4回の同賞候補作になる。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞。2013年、16年ぶりに執筆された小説『想像ラジオ』を刊行。同作は第26回三島由紀夫賞、第149回芥川龍之介賞の候補作になった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sk4
51
非常に良くできた小説だと思う。 物語の脊髄とも言うべき存在は【解体屋】と呼ばれる登場人物。似非宗教や自己啓発プログラムなどによって洗脳された人の心を解体するスキルを生業とする男。 砂漠(デゼール)という虚構の街にフラリとやって来た記憶の無い男は、その予言めいた語り部で砂漠(デゼール)の住民を魅了して体制を脅かす。しかしその男はそういうつもりでこの街にやって来たのではないのだ。 男の持つ闇。それは主人公の恭一から恭一の知る恭一自身を破壊し、広大な闇に引きずり込む。 【破壊】と【再生】、そして。2014/03/21
ぐうぐう
24
まるで今日書かれた小説のようだ。いとうせいこうの『ワールズ・エンド・ガーデン』は、1991年1月に刊行されている。これが、26年も前に書かれていたとは、到底信じられない。1991年と言えば、オウム真理教の事件も、ふたつの大きな震災も、9.11もISによるテロも、まだ起こってはいないというのに、それらをモチーフに描かれたかのような物語なのだ。湾岸戦争勃発とほぼ時を同じにして刊行された本作に登場するコーランが鳴り響く都市は、その時点ですでに予見的ではあるが、(つづく)2017/02/23
なつ
18
戦争、宗教、自分の価値。混ざり合っていて、ちょっと迷子になりつつ、読了。戦争も怖いけど、宗教も捉え方によっては恐怖。若さも時として凶器になるのかも、、と思ったり。不思議な余韻に包まれた1冊でした。2015/04/03
kenpah
10
カルト宗教、ドラッグ、洗脳などなど、いろんな要素が互いにぶつかり合ってるサイバーパンクな凄い物語でした。しかも、1991年に書かれてるそうで、びっくりです。始まりはワクワクしましたが、言葉のセンスが良すぎて後半ついていけず…6点2018/07/15
忘備録
5
「言葉の解釈」と「自己のルーツ」について考えさせる小説だった。どうとでも取れる抽象度の高い言葉を、信者達が現実世界に当てはめて解釈する。その恣意性を顕にするように、信者の中でも対立が起こる。ある人物の主観的解釈の中で、言葉が現実に溶け出す瞬間はゾッとするものがある。また、「お前は誰だ」という問いにより男は胸中の闇を引き出される。「はじまり」が定かではないことへの危惧から、子でありそして父でもあろうとする。だが、「始まりも終わりも定かでないのなら、と思いかける。それは両方ともありはしないのだ。」2020/05/16